第36章 罪と罪 後編
その蝶の飾りに
添えられていた手が
スルスルと項に降りて来る
「どうしてくれるつもりだ…?あげは」
後頭部を彼の手に支えらえて
反対の手を腰に回されてしまって
ぐいっと身体を引き寄せられてしまう
「あの…、でも、…毒…ですよ?
摂り過ぎたら、健康被害が…でるかも
知れませんよ…?杏寿郎。
毒…と言うのには、それぞれに…
致死量が……ありますから……」
「毒を食らわば皿まで…とも言うがな?
どうせ、
君を食らって死ぬ身なのであれば、
食らい尽くすまで…だろう?
それとも、何か……、君の毒は
俺を殺したりはしないか?
あげは…。確かめてみても?」
「あの、杏寿郎?あくまでも、
毒があるのは、アサギマダラであって。
私ではありませんよ……?」
彼の言葉の意味する所は
十分に理解は出来たと思って居る
今日は朝から もう何度も
口付けを交わしているのに
「……あげは」
彼の顔が近づいて来て
その気配に瞼を閉じた
その熱が収まらないのはきっと
昨日の夕方のあれが原因で
そう言う類の事ができない…所為か
私だけでなくて
彼も その熱を…
持て余しているのだろう
「んっ…、ぁん…、ふ」
せめて 口付けだけでも
と思って居るのかも知れないが
こうも 朝から何度も 何度も
熱の込もった口付けばかりを
されてしまって居ては
余計に熱を拗らせてしまいそうだ……
そうも思いながらも
熱を持て余して 拗らせながらも
こうして 彼の口付けを
受け入れてしまっている
自分がいて
「んん゛っ、…ふ、は、杏寿郎……ぉ」
「あげは……、もう少し…
君の毒を…、味わいたい……が」
唇を貪られながら
支えを求めるようにして
杏寿郎の羽織を掴んだ
杏寿郎は…私の事を
毒みたいだって 例えたけど…
私から すれば よっぽど
杏寿郎の口付けの方が
毒……みたいだ
こうされてると……毒が回って……
頭の芯から 痺れて来るのに…
ダメだって そう思ってるのに
甘くて…その痺れから
甘い毒から 逃れられない…