第36章 罪と罪 後編
渡ると言う位なのだから
渡り鳥と同じように
彼等も海を渡って移動する…のだろう
「しかし、海の真ん中では
休むことはおろか、
身も隠せないだろう?
海を渡る時に天敵…である、
鳥に襲われるんじゃないのか?」
蝶の天敵は鳥だ
まだ 森や林の中の入り組んだ様な
場所であるなら
木々や草で身を隠せるだろうが
何もない 海の真ん中にだって
鳥は居るのだから
身の隠しようがないだろうし
それに そのひらひらと
舞う様にして飛ぶ様が
突然 速くなるとも考え難い
「どうして…、彼らが無事に
海を渡れるのだと思いますか?」
「どうして、彼等が襲われないがか?
考えられるのであれば。そうだな…、
身体に毒でもあるのか?」
杏寿郎の言葉にふふっと
あげはが笑って
自分の指先にとまっている蝶に
まるで口付けるかの様にして
自分の顔の前に持って来ると
「ええ。その通りですよ。杏寿郎。
アサギマダラの身体には、毒があります。
彼等は幼虫の時から、毒性のある植物を
摂取して体内に毒を蓄えているんです。
でも…、彼らがその小さな身体に
蓄えているのは、毒だけじゃないのかも
知れませんね?杏寿郎」
アサギマダラが体内に蓄えているのは
毒だけじゃないとするのであれば
それは…
「この小さな身体には、沢山の
可能性を秘めている…んです。
中には、2000キロの距離を
飛行した…なんて
そんな記録も残ってるらしいので。
私達も、負けてられませんね?」
いつの間にか
あげはの髪にも数匹
まるで髪飾りかの様にして
蝶がとまっていて
「それに父が……孤児だった私を
引き取った時に、私にアサギと
名付けるか今の、この名前にするか……
悩んでいたそうですから…」
アサギマダラ…
その小さな身体に秘められた
1000キロの旅をする
蝶にちなんだ
名前になっていたかも知れないと
あげはがそう言って来て
「だったら、君はアサギと言う名に
なっていたかも知れないのか?」
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もし、奇跡的に名前をアサギで
お読みの方がおられましたら。
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