第5章 無限列車にて 前編
あげはの体を支えながらも
杏寿郎は先頭の車両の方へ
意識を集中させている様にあった
「うむ。少年達は鬼の頸を
見つけた様だな!!感心だ!」
ここに居ない2人のことを
褒めてるあたり杏寿郎らしい
窓の外には闇が広がっている
月の高さから考えても時間が
かなり経っているのが分かる
「それにしても、思いの外、
鬼の術で長いこと眠っていた
…みたいって」
あげはは状況を整理していて
ある事に気がついてしまった
「君が、中々起きないから、心配したぞ?」
うん そうだった
私この人に起こされたんだったわ
って事はよ?この人は私の…
「見たんですよね?」
「見る?」
目の前の触手を斬りつつ問い返してきた
「なぜ、睨む?」
「睨んでません」
「いや。睨んでるだろう?」
俺が何かを見たから
彼女が機嫌を損ねていて
俺は睨まれている訳だが…何を
「見ましたよね?だから、
その…、私の、ね」
「ね?何だ?ああ、寝顔か?見たぞ!」
「で、ですよね?
そうだと思ってたけど…も」
「鬼が居ないのなら、
そのまま眺めていたい所だったが。
残念だったな!」
「そんな物、眺めなくていいですから!」
「言ってないぞ?」
言ってないとは何のことなのか?
「言ってないのに、怒られるのか?」
目と鼻の先の距離まで顔を
近づけられて問いかけられる
杏寿郎の言ってないの
意味を理解したあげはが
慌てて手を振って否定する
「いいです!言わなくていいです!
言いたいことわかったし!」
言わなくても言いたかった事が通じて
杏寿郎は嬉々とした笑みを浮かべていた
「今度は、ここじゃないどこかで
…じっくり眺めたい所だな」
「ちょっと!バカな事言ってないで、
真面目にやって下さいっ」
あげはにあしらわれ不満そうにすると
「俺は、真剣に言っているし、
真面目にしているが?
ああ、話は変わるが。
君は…水と雷の呼吸が使えるのだな」
「あ、それ以外も使えますよ」
「それは、見てみたいな!」
彼女がそれに了承してくれたので
俺はてっきり鏡柱である彼女だけの
呼吸が見られると思ったのだが
シィアアアアァアーー
この呼吸…の音は 風の呼吸か…
「風の呼吸 弍の型 爪々・科戸風!」
あげはが刀を振り下ろすと
4本の斬撃が前方へと飛んで行く
成程 不死川の…技か…