第35章 罪と罪 前編
「宇髄が……言っていた通りに
なってしまったがな。
宇髄は、この戦いは
終わった後の方が
大変だとは言っていたが……。
終わる前から、
この様では不甲斐ないばかりだ。
どうにも、先が思いやられる…な」
そう ふと漏らした
彼の弱音ともとれる発言に
あげはがきょとんと目を丸くさせて居て
「何だ?あげは…。
そんな顔をして……。
俺が弱音を吐くのは意外か?
俺を、こう変えたのは…。
他でもないあげは、君だろう?
忘れたとは…言わせないぞ?」
その杏寿郎の言葉に
あげはがぶんぶんと首を大きく
左右に振って
「いいえ。私が…杏寿郎に
そうして貰いたいと、言ったんですから。
驚きはしましたが、
……とても喜ばしい…と
そう思っておりますよ?杏寿郎」
「やはり…、君には敵いそうにない…な。
そんな台詞を、そんな顔をして
言われてしまっては。
形無しになりそうでもある」
この戦いが
終わった後…の方が大変だと
宇髄さんが 杏寿郎に そう言ったんだ
はなから
忘れるつもりはないにしても
受け入れるのにも きっと
数年……
いやもっと 時間が掛かるのかも知れない
でも それに 例え…何年掛かろうとも
私は きっと…… 彼とならば…
ひとりじゃ無理かも知れないけど
彼となら… 彼が居てくれたのなら……
きっと…
「杏寿郎。私は……、貴方と…
一緒に…、強くなりたいです。
時間が掛かるのは覚悟できています。
例えそれに…、一生を費やしたとしても…。
私に後悔はありません」
スッと杏寿郎が
あげはの頬に手を添えて来て
じっと目を見つめられてしまう
「弱い…俺を、受け入れてくれるのは。
君位な物だからな。俺を弱くするのも、
あげは……君だが。俺を強くするのも、
あげは……また君なのだからな。」
すぐ目の前に彼の顔があって
コツンと額が触れ合った
お互いの額を合わせたままで
視線を合わせる