第35章 罪と罪 前編
「アルビノの鴉の不遇は、
ご存じでしょうか?実の親ですら、
育児放棄をするのです。
生まれながらに
実の親からも、見放される…。
自然界では、
その白い身体は目立ちすぎますから
外敵にも当然狙われやすくなりますので。
アルビノの鴉の親は、その白い雛鳥を
自分達の巣を守る為に地面に落とすのです」
鴉ですらも
自分と異なる姿をした
我が子を毛嫌いするのか…
ならば 人であるなら?
自分とあまりにも異なる容姿をした
我が子を受け入れて
慈しみ育てる事が……出来るのだろうか
そうか…
確か 彼女の父は
生まれながらに障害を持って
家族からも見離された様な
そんな 人々を自分の病院に
保護していたと…言って居たか
「環は、そうして弱っていた所を
お館様に
拾われた様でしたので…」
彼女は……アルビノの彼の境遇を
この白い鴉に重ねていたのか
「苦労が多かったのではないか?
人の言葉を、
君の鴉は話せないのだろう?」
「父の病院には、
言葉が話せない人も数人居ました。
でも…、伝えたい事は
その人にもあるのです。
話が出来ないから、
伝えられないだけであって。
伝える術を持たないだけの事。
そうであるのなら、言葉でなくとも、
それを私が注意深く観察する事で。
その伝えたいと思って居る事を、
感じ取れたのなら
代わりに言葉に
変える事が出来るのなら…と」
「だから、君はいつも君の鴉を
注視しているのだな……。
その鴉の仕草や視線から……考えを
読み取ろうと、感じ取ろうと
意識を向けているのだな」
言うなれば……
それは 彼女なりの
罪滅ぼしなのかも 知れんな
あの夜に…
失われて行った命への
彼女が あげはが異常なまでに
あの鎹鴉を
可愛がって大切にしているのも
自分が失った大切な物に
環を重ねているのか…?