第35章 罪と罪 前編
珍しい……と思ってしまった
杏寿郎の方から
透真さんについて聞きたがるなんて……
「彼が、
透真さんが鬼殺隊に入ったのは。
私よりも3年前ですので…、
13年前になりますね。
透真さんが水柱になったのは、
丁度10年前になりますか」
「彼は…、どれぐらい柱をしていた?」
「えっと、6年程……だったかと」
「あげは。今の俺でも……まだ、
彼には敵わないと……、そう思うか?」
杏寿郎の言葉にうーんとあげはが
唸り声を上げて考え込んでいる様で
言葉を選んでいるのかと思えば
そうではなく
自分の記憶にある
三上透真と俺との手合わせを
頭の中で想像しては
その結果を
幾通りにも考えている様だった
しばらくすると
それも終わったようで
あげはこちらを向いて言って来た
「……いい勝負…、にはありそうですが」
そのあげはの言葉を聞いて
二ッと杏寿郎が口の端を上げる
「君の見解だと、
俺にも勝機がありそうか?」
「そうですね。
杏寿郎が……私の教えた
あの呼吸をどこまで、
洗練して下さっているのか。
そして、元の炎の呼吸を
どこまでの段階まで、極めておられるのか。
その既存の呼吸を二段呼吸でどの様に、
改変をなさっているのか。
その辺りが、勝敗を左右するかと」
腕組みをしながら
杏寿郎があげはの話を
頷きながら聞いていて
「後…もうひとつ、
俺から聞きたい事がある。
鏡柱の君にだ……。鏡柱!
君は柱だったあの当時と、今ならば…
どっちの君の方が上だ?
俺は…、正直な所。
あの当時の君の実力を、
はっきりと知らないからな」
自分では判断が付かないのか
あげはは考え込んでしまっている様だった
「この数日だけでも、君は急激に
力を付けている、実力を伸ばしている。
たった数日間で、
1年にも勝る程の伸び方をしている。
極限状態で、
必要に迫られているのは分かるが。
そこまで、急がなくても良くはないか?」