第35章 罪と罪 前編
ああ やはり
彼の 透真の笑顔は 日向の様な
春のお日様の様な
そんな笑顔だと… 感じていた
『なら、…ひとつだけ
約束してくれるかい?透真』
『はい、お館様。
お館様のお望みとあらば…』
『その時に…、透真はその
いつもの笑顔で……居られるかな?
あげはにそれを望むのなら、せめて
そうして……あげてくれるかい?』
『僕も…、
そうするつもりです…ので。
お館様には、やはり…全て
お見通しの様ですね。それでは、
私はこれにて……下がらせて頂きます』
更に深く頭を下げて
透真が言うと
いつものお日様の様な
あの笑顔を浮かべて居た
『お館様……、
どうかお身体をご自愛下さい』
『ああ。…ありがとう。透真』
『それでは。行ってまいります』
そのまま
こちらへ背を向けて歩いて行く
その姿が小さくなっていくのを
目では捉える事は
産屋敷には叶わなかったが
その気配で感じ取って居て
その気配が自分の屋敷から離れた頃に
漏らすようにして呟いた
『透真…、君の唯一の願いはきっと。
あげはが叶えてくれる……よ。
そして、君の……心の中にある。
その望みも。彼なら、
杏寿郎ならきっと、受け入れてくれる。
私はそう信じてるんだよ。透真』
ー
ーー
ーーー
「酷い……話だと…、思わないかい?
どう感じたかな?にちか、ひなき…」
産屋敷の前に正座していた
にちかがいいえと首を横に振ると
そのまま自分の感じた事を話し始めた
「お館様の…、
お考えが…正しいと思います。
私であっても、同じ事を致しました…」
「でもね、時折迷うんだよ。
本当にこの方法しか、彼を救う
手段がなかったのかなって。
別の手段があったなら…と
そう…思ってしまうんだ。ダメだね…」
「しかし、そうでありましたら。
煉獄様があまりにも、
不憫に…あられて、居た堪れません」
杏寿郎が 不憫……
そうか……そうだね
そうなってしまったら……
ふっと産屋敷が口の端を曲げる