第35章 罪と罪 前編
彼女に背負わせてしまうと
そう思えたから…だ 重荷でしかない
只でさえ 辛く
苦しい戦いを決意した彼女に
これ以上
何かを背負わせるなど…できまい
だが……あげはと煉獄にならば…と
あの二人になら…ば
「杏寿郎も、あげはも強くて
それでいて、優しい子だ。
杏寿郎だけで、出来ない事も
あげはが一緒だと出来るだろうし。
また、その逆も……然りと言えると
私は思って居るよ?」
ね?と悲鳴嶼の方へ
産屋敷がほほ笑むと
一呼吸置いて
それから またゆっくりと
言葉を紡ぎ始めた
「君も…変わりつつあるんじゃないかな?
前へ進もうと、しているんだね。偉い子だ。
なら、私も進まなくてはならないね…。
行冥。……彼は、それを自ら望んだ。
そこにあるのが、……終わる事のない
苦しみだとしても。彼のその
苦しみもまた、無駄には出来ないよ?
そうするのも、また罪だろうからね。
なら、応えなくてはならないね?」
「お館様の……、お言葉の通りに
あります。この 悲鳴嶼行冥……、
かの者の為にも……その誓いに
必ず、応えますことを…お約束致します」
「うん。ありがとう、行冥
行冥がそう言ってくれて
私も、嬉しいよ」
悲鳴嶼が産屋敷の元を去って
しばらくするも
その後もそこから
動こうとしない産屋敷の元へ
にちかとひなきが恐る恐る近づくと
その顔を左右から覗き込んで声を掛ける
「お館様、お体に触ります…」
「お館様。お部屋にお戻りを…」
「いや、いいんだ。にちか、ひなき……。
もう少し、ここに居てもいいかな?
2人とも、こちらにおいで?
…聞いてくれるかい?
私の……とある子についての話を…」
そう言いながら
ふたりの頭に左右の手をそれぞれに乗せて
ぽんぽんとその頭を撫でた
「お館様?」
その場に崩れるように
座り込む身体を両サイドから
にちかとひなきが支えて
座りやすいようにお互いの身体で支える
「ありがとう、二人とも…。
そう、あれは…4年以上前になるね…」
そう あれが……あの時が
彼を 透真を見た……最後の記憶…