第35章 罪と罪 前編
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整った 隅々にまで
手入れの行き届いた
日本庭園が広がる
その庭を分断する様に流れる
小川のせせらぎの音が
少し遠くに聞こえていた
この屋敷の主である産屋敷が
自分の目の前傅いている
人物に対して声を掛けた
「やぁ、急に呼びつけてしまって
すまないね…。行冥。今日は…
いい天気…なのかな?」
「はい、お館様…。雲一つない
晴天にあります」
悲鳴嶼が雲一つない晴天だと
そう言った空を 産屋敷が仰ぐと
眩しそうに目を細める
日の光を遮るように
右手を日除けにして
自分の目の上に沿えた
「どうしても…、
話しておきたいと思ったんだ。行冥。
君に確認をね、して置きたかったんだ…。
もう…、そろそろいいと思うんだよ?
まだ、行冥はあげはにも杏寿郎にも
話すつもりはないのかな?どうだい?」
悲鳴嶼からのその問いかけに
対する即答での返事はなかった
沈黙が続いて
しばらくしてから
ぽつり ぽつりと漏らすようにして
悲鳴嶼が言葉を選びながらに話を始めた
「お館様…は、
全てお見通しであられる様だ…。
しかしながらに…、事の責任は私にある。
私はあの日、
彼からの申し出を断ってしまった。
私が、あの時に
それを受け入れる強さがあれば。
こうは……、事がここまでに
なる事もなかった…。誰の手も
煩わせる事無く、済ませられた物を…ッ。
全ては、私が……、未熟だった故…の罪…」
そう言って自分の手に掛けていた
数珠をジャラジャラと音を立てて
擦り合わせる
「罪…、それは本当に罪だと思うのかい?
……私はそうは思わないよ。行冥。
君が…、そうできなかった様に。
私もまた、そうできなかったのだから……。
一緒だよ、行冥。君の所為じゃない。
けど…、それが結果的に、
あの子を、透真を苦しめるだけに
なってしまったのは事実だ。それに……」