第34章 彼からのお土産
自分で自分の事を……
責めたくなってしまいつつも
それを彼に許可したのは
紛れもなく 自分なので
それを強く責める事もできずにいて
当然 触れるだけ…の
…口付けだったのは
始めのほんの数秒だけだった訳で
その先は…
頭の芯まで熱でうなされそうな
そんな… 濃厚な
口付けをされてしまって
当然 またしても
先程 差しなおしたばかりの
紅は崩れてしまったので
ニコニコと私の向かい側で
満面の笑みを浮かべている
杏寿郎を尻目にしながら
イライラと苛立ちを隠せずに
あげはがその場で
杏寿郎から贈られた小町紅ではなくて
自分の私物の紅で
崩れた紅を直していると
ジッとこちらに向けられている
その目と視線がぶつかる
「いいのか?俺の目の前で…
そんな姿を見せて…しまっても。
それに、俺の贈った方の紅は
もう、差さないのか?」
杏寿郎の言葉に
ムッとあげはが眉を顰めると
「いいもなにも、今朝だって
私が顔を整えてるのご覧になってた
じゃないですか。それに杏寿郎が、
私が紅を差しているのを見ているのは。
今朝に限っての事でもありませんし?
そんな物見たがる男性なんて…、
そうはおられないと思いますが?
それに…あれは、差すのに、
水が要りますので、今は使えませんよ」
「ん?そうか……、化粧を施せば
女は化けると言うが…。
その移り行く様を見るのも、また……。
趣があると、俺は思うがな」
はぁっと杏寿郎の言葉にあげはが
ため息をついて
「本当にそんな物見たがるなんて、
変わってますね。杏寿郎は…」
「そうか?
それは……褒められてるのか?
それに君は、そう変化がないだろう?」
「変化?」
「君は、塗っても塗ってなくても
そう変化がないと俺は言ってるんだが?
むしろ、元々の方が、
顔立ちの所為か幼く見えるしな。
俺は君の素顔の方が、
あどけない感じがして好きだがな」