第34章 彼からのお土産
このままで いいのだろうか?
そんな 不安にも似た感情が
あげはの中で湧き上がって来た
杏寿郎は……私の為に
私の全てを受け入れてくれたのに
そうされるばかりで
私は 私は……?
このままでいいのだろうか?
彼はそこまでして……
自分に苦行を敷いてまで 心を
私に対して 心の限りを……
尽くしてくれていると言うのに
私は 何もしないまま?
そうしてもらうだけ?
それで……いいの?
「…そんなの、いい訳…ない。
いい訳……、ないよね?
そうでしょう?そう、思うよね?」
髪を纏める前の
鏡の中の自分に今は亡き
親友の姿が重なる
その穏やかな微笑みが
そうしたらいいんだと……そう
言ってくれている様な
そんな…気がして
笑って居て欲しいとそう
彼女が望んでくれていた
この笑顔を 絶やす事なく……
私に幸せになって欲しいと
そう 望んでくれた彼女の
その…カナエちゃんの願いを…私が
負い目の感情を持たないで
叶える事だけを もっと欲張って
考えてもいいのかなって
杏寿郎との
幸せな…未来を望んでも
許されるのかなって
けど……その為には
そうする為には
私にはしないと
やらないといけない事がある
しっかりと前を見て
進んで…行かなくちゃ……
今と決別を付けて 前へ
今の先にある 未来へ…
自分の足で 進んで
自分の剣で 切り開かないと
けど 決してそれは
彼を忘れてしまっていい
そんな理由には ならないとしても
こんな 結末しか
私達は選べないのだとしても
だからと言って 許されてなんてなくて
立ち止まっては
もう居られないのだから
前に 進まなくては
私自身が 前に 進まないと
それが出来るのは
それを望まれているのは
他の誰でもなくて
私なのだから
私にしか出来ないのだから
「その為にも、過去の自分とも、
しっかりと向き合わないと……ね」
一度身に纏った矢絣の羽織りを脱ぐと
元の掛けていた場所に羽織りを戻した