第34章 彼からのお土産
「証拠にございます」
そう静かに工藤が言って来て
杏寿郎が眉を顰める
「証拠?」
「その苛立たれるお気持ちは、
鏡柱様を想うが故にあられましょう」
「わざわざ、釘を刺されずとも、
俺自身も理解しているつもりだが?
工藤…。
それとは別の件についてだが、
胡蝶には俺からも文は
予め送ってはあるが。
お前からも、詳細についての
話をつけてくれているだろうか?」
そう言いつつも
苛立っている……のは
工藤の目から見ても明らかであって
矢継ぎ早に言葉を続けて来る
「場所を決めるのは本来であるならば、
あちら側であるべきだろうが。
今回は特別あまり時間もないし、
胡蝶も柱の身で、忙しいだろうからな。
で。俺が、前に言った場所は
その日は押さえられそうか?」
この焦りの原因は…
鏡柱様と関連があり
元々 せっかちな性分の方ではあるが
炎柱様を ここまでに急かすのは
一体…何故なのか?
一種の執着にも似たような
そんな感情にも見える
そこまでに 炎柱様が
事を急いてまで
鏡柱様とのご結婚に拘る理由だ
ひとつは 鏡柱様の年齢的な問題
もうひとつは ご懐妊の問題
それらが理由かとも考えもしたが
どうも それらは理由としては
工藤からしても 考えにくかった
確かに年齢的には結婚は急いだ方が
良いとは思えるが
当の鏡柱様ご本人は
炎柱様よりも
年下に見える程の見目通りであるし
もうひとつの理由も
その可能性は否定されているのだから
何か…別の理由が
あると言う事になるが……
何がこの方を
ここまで追いつめているのか
それは 知り得ないが
私が…炎柱様に出来る事と言えば…
無理難題とも言える
期限までの刻限の少ない
彼の望みを叶える事ぐらいだろう
そんな事を考えていて
知らず内にぼんやりとしていた様で
こちらからの返事がない事を
気にして炎柱様が声を掛けて来た
「工藤。聞こえなかったのか?
俺がお前に依頼した件は
どうなっていると聞いているんだが?」