第5章 無限列車にて 前編
頼んだぞと言い残すと
ドンッと床を蹴って
目にも留まらないスピードで
移動して行く
その反動に耐え切れずに客車が
バウンドして跳ねた
「きゃあっ!」
その勢いに
バランスを崩したあげはが体勢を整える
「そんじゃ、私は。
力を抜きつつ、頑張りますか!」
と日輪刀を構え直した
スゥウウウウウー 水の呼吸
「肆の型 打ち潮!陸の型 ねじれ渦!!」
あげはが続けて型を繰り出して
触手を薙いで行く
「漆の型 雫波紋突きいっ!」
突きを繰り出すスピードに
合わせて床を蹴ると
前方の車両へ移る
「参の型 流流舞い!」
滑るような動きで足を流れのままに運ぶと
更に前へ前へと移動しながら切り払って行く
どの客車も…同じように侵食されてる
この汽車の中にはもう
どこにも安全な所はなさそうだ
乗客も血気術に掛かっているのか眠っている
起きているならどこかの車両に集めた方が
こちらとしても守りながら戦えるのに…
あげはが ふうっと息を漏らして
天井を見上げると
所々に私がつけた物じゃない
先にここを移動して行った杏寿郎の残した
斬撃の跡が残っていた
鬼の回復のスピードも中々に早い
恐らくは十二鬼月…
「上弦には及ばずとも…、下弦の中なら…」
下弦の壱と呼ばれる鬼だろう
この感じだと
本気になりすぎるなと言われたが
彼が戻るまで時間を
稼がないと行けないし
私は後方 5両の客車を
それこそ駆けずり回る事になる
「でも、どうせだったら。
まだ回復し切ってない内に
もう少し、欲張ってもいいんじゃないかな?」
腰を落として構え直すと
シィイイイイイーー
水の呼吸から雷の呼吸へ切り替える
雷の呼吸は水の呼吸よりも
技のスピードが速い技が多い
ある程度の広すぎない攻撃範囲と
連撃を繰り出せるから
この狭い場所で使うのには
持ってっこいの呼吸だ
ドォオオオンッーー
落雷の様な音 前方からだ
「善逸君。起きたのかな?…
雷の呼吸 弍の型 稲魂!
参の型 聚蚊成雷!」
稲魂は高速の5連の斬撃
聚蚊成雷は流流舞いの様に移動しながら
斬撃を繰り出す事ができる技だ
ドォオオオンッ ドォオオオン
雷鳴が二つ轟いた
「よもや!君は雷の呼吸もそれ程までに、
使いこなせるのだな!
単体では初見だが、見事だ」