第33章 たった一つの揺らぐ事のない
あげはの耳元に
杏寿郎が口を寄せると
「もしや…、あげは。
今夜の君は、俺に……
触れられたいと、触れて欲しいと。
そう、
……思ってくれているのではないか?」
そう囁く様にして
問いかけられてしまって
その声に思わず
ドキッと胸が跳ねてしまった
触れて欲しい…… と思ってると
私が思っていると言う事実を
杏寿郎に 知れてしまって居て
自分から それを
強請ろうとして置きながらに
急に気恥ずかしくなってしまって
いたたまれない気持ちになってしまう
答えを私が返さなかったからか
「そうでは、…ないのか?あげは。
俺は…、君に求めて貰ってるのだと、
そう勘違いしているだけだろうか?」
どうなんだと言いたげに
言葉を 答えを
急かされる様にして
杏寿郎がそう言って来て
ギュっと絡めて繋いだ手を
握りしめられてしまうと
絡めた指と指の間に
びりびりとした痺れが生じる
只 只 それだけの事なのに
少し触れているだけなのに
こんなにも… それを
大袈裟なまでに感じてしまっている
自分が居て…
自分でもどうしようもない…と
思っているのに
声が漏れ出るのを押さえられない
「……んっ、ふっ、あっん……」
彼女の半開きになった唇の間から
小さく 甘い可愛らしい声が漏れる
その微かな 小さな喘ぎを聞けば
彼女の思って感じてる事が
俺にも感じ取れてしまって
そう 望まれていると言う現実に
このまま
酔いしれてしまいたくも……なるな
求められると言う事は
望まれると言う事は こうまでも
喜ばしい…事なのだな…
知りもしなかった様な
俺が今まで生きてきた中で……
感じて来た どの感情とも違う感情だ
彼女を通じて得た……様々な感情…
その感情のひとつひとつを
愛おしい……と思う
心の中が 満たされて行く…
そんな充足感…が胸に溢れる