第33章 たった一つの揺らぐ事のない
「君が俺で
どうしようもなくなってしまいそうなら
俺は……、それを欲張りたい…のだが?
あげは、違うか…?今の君は
自分の中にその感情を
収めきれなくなって
しまってるんじゃないのか?」
「ん、す……、少しだけ…ならッ…」
あげはのその消え入りそうな程に
小さな声で言った言葉を聞いて
くすっと杏寿郎が笑った
相変わらず 素直ではないが
含みは……あるか あげはらしい……が
「少し……でいいのか?」
「少し……にしておかないと……、
もっと……って
杏寿郎にもっと、触れて…
欲しいって思っちゃうの……やんッ。
我慢…できないかもっ……知れ…っ、んんっ」
あげはがその言葉を
紡ぎ終えるのを待たずに
その唇を杏寿郎が自分の唇で塞いだ
「素直になれとは確かに言ったが、
君が…あまりにも、
素直になり過ぎる…のも。
それはそれで…、厄介だな…」
一旦唇を離すと
そうため息交じりに杏寿郎が漏らした
触れるだけの口付けなのに
いつもなら 声を漏らす事も無い様な
軽い軽い 触れるだけの
そんな口付けしかしていないのに
少しばかり開いた唇の間から
甘い声が漏れて零れる
「ふぅ……ん、、はぁ、ん……」
自分の中に想いが留めて置けないととでも
言っている様にもその声が聞こえてしまって
そうして 漏らすその声が
彼女の中から溢れた
俺への想いなのならば……
零れて 消えゆく様さえ……
惜しい……とすら 感じてしまって
ギュッとその愛おしいと想う相手を
自分の胸に閉じ込めた
「あげは……、俺と……居て欲しい。
俺の隣に、ずっと……君に居て貰いたい」
「杏寿郎……、私で…いいの、です……か?」
彼女の声が震えていた
それはきっと堪えている感情の表れで
自分の中にある 彼への想いを
抱えている自分でいいのかと……
俺に 問いかけて来て居て…