第33章 たった一つの揺らぐ事のない
指先で少し唇を開かされて
その隙間から彼の指が
口の中に滑り込んで来ると
杏寿郎の指の先が
スルスルと歯列をなぞる
「んっ、……そうされたらっ…、
話せなっ……い、のに…ッ」
「ん?ああ。邪魔をしていたか?
それはすまないな…」
唇を押しながら
歯列をなぞって居た指が
そっと離れるのを感じて
「これで…、
言って貰えるだろうか?あげは」
「…杏寿郎の……、意地悪ッ……」
「ん?それが……、
ご希望ならば応じるが?あげはは…、
俺に意地悪を…されたかったか?」
そう左の耳で甘く囁かれて
そのまま噛みつく様にして
左の首筋に口付けられる
「んっ、…はぁ、
やっ、…ん、あぁん」
そのまま腰を引き寄せられて
首筋に舌を這わされれば
彼に反応して身体が跳ねる
「口が素直じゃない分……、
身体は俺に素直な様だがな?
少々素直が過ぎる…か、こっちは」
「杏寿郎のバカッ…、
もう、嫌いっ…知らないッ」
言ってから しまったと思った
でも 彼が意地悪をしてくるから
つい 言ってしまったんだけど
そんな意味での嫌いじゃなかったのにも
関わらず…だ
目の前の杏寿郎は
あからさまに気落ちしていて
いや もう…
そんなつもりじゃなかったんだけど
「……あの、杏寿郎…?」
そう恐る恐る声を掛けてはみるが
その場で座り込んでしまって
視線を逸らされてしまって
目も合わせて貰えないのだけども?
「俺の事は…、
その、嫌い…なのだろう?」
「そ、そんな事はありませんから!
断じて…ッ。さっきのあれは、
本心ではありませんから…。
その場の流れと言いますか…、
あの、杏寿郎?」
「なら…、どうなんだ?
俺の事が、嫌いでないのなら…」
「好きですよ。杏寿郎…。
杏寿郎が…好き…。あ、その……、
えっと…、好きなんです…。杏寿郎。
…好き…ッ、あ、そうじゃなくてっ…」
「違うのか?」