第33章 たった一つの揺らぐ事のない
「あげは……。
君の言いたい事は分かる。
だが、俺にそれは出来ない…。
そうしたいと言う気持ちが、
全くないと言えば嘘になる……が…、
君の中に在る…彼の存在を
責める事は…出来ない…んだ。
それを…言う事は憚られる……からな。
やはり…、俺は…彼を認めざるを得まい」
そう言葉を紡ぐ彼の言葉は
普段の彼の言葉からは
想像もできない位に歯切れが悪く
彼の 苦渋の苦悩が…
その表情からも
言葉からも… 伝わって来る
ギュ……と杏寿郎に身体を抱きしめられる
そうまるで 縋り付くかの様に
まるで 私と言う存在が
幻か何かの様な
露とて消える そんな儚い何かかの様に
私と言う存在を
現に繋ぎ止めるかの様にして
抱きしめられる……
「あげは……。
何故なら、それは…
彼が…、居なければ
……あり得ないから……だ」
上から
ぽつ……と
何か…が 降って来た
雨……?
いや… 違う これは
彼の… 涙…だ
杏寿郎の 涙…
「杏寿郎……?
泣いて…いるの…ですか?」
それを 確かめようとして
あげはが彼の顔を見ようとするも
頭を押さえらえてそれを阻まれる
そのまま
更に強く彼の腕に閉じ込められて
「全ての…証拠…なんだ。
あげは…。君の存在その物が…、
全ての確たる証拠であり。そして、答えだ」
私がここに居る事
私と言う 存在が 在る事……
それこそが
全ての確たる証拠であり そして… 答えだと
そう彼が 杏寿郎が言って来て
その言葉で… 一瞬にして納得がついて
彼が… 彼についての
現状の全てを…知ったのだと
私にも… 理解が出来て
杏寿郎が…
私の中に 透真さんが在る事を
在り続けている 事実を……
それを責める事すら……
憚られると言っている理由が
痛い…位に 伝わって来て
彼の…苦悩が…
私にも 伝わって…来るみたい…