第33章 たった一つの揺らぐ事のない
「俺は君に…、
彼を忘れろとは言わない……」
杏寿郎の言葉に
あげはが目を見開いて
その顔を曇らせると
それから 俯いてしまった
あげはからの返事はないままで
杏寿郎が更に言葉を続けて行く
「彼が…、今も
彼で在る事が出来ている…
その理由が、
あげは…、君の存在なのなら…ば」
彼が4年…にも渡って……
孤独な絶望と戦い続けられている
その精神を保ち続けられている
その理由が…あるのならば
それは 間違いなく
あげは自身…の存在を守る為…だろう
「俺は君に、彼を…三上透真を
忘れてしまえばいい……等とは、
大凡言えたものではない……」
”彼を忘れろとは言わない”
杏寿郎の言葉が…
全てを
許してくれているのだと……知って
あげはが顔を上げた
杏寿郎の顔を見て 分かった
彼の顔がそうだ言っていて…
許されているのだと
……私の
私の心の奥底の 彼への
透真さんへの想いを……消してしまう
必要はないと 彼をなかった存在に
しなくていいのだと
そう許されて…しまって
彼の事等 忘れてしまえばいいと
責められる 方が
遥かに許される事よりも…楽だと
そうも…思いながら…に
そう想う気持ちのある
私のその全てを受け入れてくれる
その姿勢を彼が示してくれている現実に
彼の 杏寿郎の…
深い愛情を…感じずには
居られない……
私は 彼に 愛されてるのだと…
そう 感じずに居られな……くて
心が震える…
それも どうしようもなく
そうなってしまっていて
縋る様な目で彼を見つめた