第32章 深まる謎と謎
「そうです、この呼吸には。
心臓の拍動を速める効果があるんです。
その方がより効果的に
全身に呼吸を酸素を送れますから。
心臓を意識的に
拍動させるのではなくて、
呼吸を意識させて随伴的に起こす
発作性頻拍症です、言わば。」
発作と聞けば
あまり聞こえが
いい様に聞こえないのだが……
「発作と言ったか。それは、
起こっても問題はない物なのか?」
「この呼吸が起こしている頻拍は恐らく、
上室性頻拍でしょうから。
上室頻拍であれば、
発作その物が命に関わる事もありませんし、
意識すれば自分で止めれますし。
数分で消失するものですから、
問題視もされませんけど。
まぁ、これが癖、みたいになって
関係ない時に長時間であったり、
頻回に頻拍発作を起こすなら…
心負荷が掛かるでしょうけども?」
「あげはさんが、
俺達にあまり使うなと言ったのは
その辺りから…って事ですか?」
炭治郎の言葉にあげはが笑顔になる
「そう、そういう事。……生涯拍動数…
と言う言葉は、ご存じです?
生き物が生きている間に、
心臓が拍動する回数には、
限りがあると言う…話なのですが」
生き物が一生涯に打つ
心拍数についての話…を
あげはがして来て
「どこかで、象やクジラの様な
大きな生き物は拍動する回数が少ないと
言う話なら、聞いたことがあるが…」
「体の小さな生き物程、
心拍数は多いんです。
一分間の心拍数は、
ネズミとかなら400~600回、
逆に象なら20回。
動物の生涯拍動数は、
約8億回…だと言われています。
そして…、
人間だけが大きくこの法則から
外れた生き物だと言う事も……」
そうあげはが一旦言葉を区切ると
自分の心臓の上に自分の手を当てた
人間だけが…
他の生き物の理と大きく
異なるのだと言って来て
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上室性頻拍
不整脈の一種で突然脈拍が150~200
位まで上昇し、しばらくすると治まる。
心臓は電気信号で制御されているが
何らかの原因でその信号にバグが生じた状態。
自分でその頻拍を止める方法に
バルサルバ手技と言う方法があります。
頻拍が起こり始めの早い段階なら
かなり有効だと…聞きました。
循環器内科の医師に……。