第32章 深まる謎と謎
炭治郎の顔は明るくなるが
その向かいにいたあげはは顔を顰めて
「杏寿郎。お戻りになられるのであれば
玄関からお戻りになられては如何です?」
そことそことそことあげはが
塀を指さすと そこには杏寿郎が
塀を乗り越えてその上を移動し
中庭に直接来た
痕跡がくっきりと残っていて
「すまない。我妻少年が、あげは。
君を褒め称えて居るのが聞こえたからな。
俺も君を褒めたいと思っていた所だ!」
「いや、いいですから。褒めなくても」
「どうして遠慮するんだ?あげは。
遠慮するのは良くないと、
いつも言っているが?俺は
いつでも、君の事を褒めたいからな!!」
「もう、バカな事はいいですから…
杏寿郎も稽古に戻られますか?…あっ」
バサバサ……
炎屋敷の中庭の上空を
旋回する鴉の姿が見えて
その真っ白な体をした鴉は
紛れもなくあげはの鎹鴉の環の姿だった
あげはがその姿を捉えると
彼女の表情がぱあっと明るくなる
「環っ!お手紙を届けてくれたのね?
いつも、ありがとう……。環、ご苦労様」
真っ白の鴉が下りて来て
差し出された
あげはの腕にとまる
その身体を労う様にして
あげはがよしよしと環を撫でていた
その足に括り付けられている
2通の手紙の一つを外して開くと
その一つの手紙の主は
親友である
甘露寺蜜璃であった
あげはの鴉の環の足に
もう一通手紙が括り付けられていて
あげはがその手紙を取り外して広げると
一変してその表情が変わったのが見えたが
すぐにいつもの顔に戻る
「え、あ、…杏寿郎さん。先ほど
蜜璃ちゃんと……も、お出会いに
なられたのですか?」
「ああ。甘露寺にも会って来た。
近い内に家に来るそうだ。
泊まっていくと良いと、
伝えてあるからな!」
「甘露寺さんって?」
「ああ?誰だそれ?」
蜜璃の事を知らない
善逸と伊之助がそう言って来て
「甘露寺さんも、煉獄さんや
冨岡さんと同じ柱の人だ。えっと…」
「甘露寺は恋柱だ!甘露寺はあげはの
親友だし、俺の元継子でもある!」