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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第32章 深まる謎と謎


そう言って店の主人が

表に置いていた小町紅と
杏寿郎が一緒にと
言った奥にあった ある物を

ちりめんの生地で出来た
桜の花びらが幾重にも
重なった形をした巾着に入れて

杏寿郎に手渡して来る


「主人、俺はこれは
購入した憶えがないのだが……」

買った憶えのない物に
品物を入れられてしまって
杏寿郎が戸惑いながら言った

「このちりめんの袋はあっしの、
かみさんの手作りでさ。売りもんなのは
売りもんなのには違いはねぇが、
何、俺からのサービスでぃ。取っときなせぇ」

「そうか。主人…がそう言うのならば、
ありがたくお言葉に甘えるとしよう!」

「それに、お客さん。
アンタの想い人も喜んでくれると
思いやすぜ?女ってぇもんは
幾つになっても、可愛らしいモンには
目がねぇ生き物……ってぇもんでぃ」

「長年、女性客を相手に
商いをしてきた主人が
そう言うのであるなら、そうなのだろうな!
して、お幾らだろうか?」

金額を聞いて
杏寿郎が数枚自分の財布から
札を取り出してそれを店の主人に握らせる

「今、お釣りを……」

「釣りは結構。取って置いてくれ!
ありがとう、主人!いい買い物をした。
世話になったな、では」


そう言ってスタスタと店を後にして
杏寿郎は通りを歩いて行った

店の主人は自分の手に残った
その札を見つめながら
狐にでも騙されていて

この札が 葉っぱにでもなるのかと

じっと眺めていたが
確かに本物の紙幣の様だった


「あんな気前のいい客がいるんだなぁ……、
若いのに、随分とまぁ、
気風のいい兄ちゃんじゃねぇか」

その目立つ羽織の
後ろ姿が小さくなって行くのを
小間物屋の主人は見つめながら


「まいどあり」


そう小さく 呟いた


「あんな兄ちゃんに愛される、
女てぇのは、一体全体、どんな
いい女なのかねぇ…。それこそ、
小野小町みたいな、絶世の美女なのかねィ?
見てみたいもんでさ…。
おっと、いけねぇや仕事仕事…」
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