第31章 その名を継ぎし者
あげは お前の目から見て
俺は どれぐらい
追いつけて いるのだろうか?
あの人の
ずっと 追いかけて来た
あの人の 師範の
透真さんの… 背中に
俺と透真さんとの力量の差は……
歴然で 雲泥の差とも
かけ離れているとも呼べる程だった
透真さん……
俺は 追いつけて 居るのだろうか?
貴方に……
「透真さん……」
自分の目の前にある日輪刀に向けて
義勇がそう静かに呼びかけた
前に ここで
師範と継子として
稽古をしていた時の
その時の記憶が……
その刀に重なる
今は 居るはずのない
その人が
稽古着に身を包んで
そこに正座をしている姿が
幻の様に……
脳裏に 浮かんでくる
「師範。俺は…、
貴方を討つと決めました。
それが……、俺から貴方へ出来る
最初で最後の恩返しだと…、
思って…っ、い…ます」
自分の覚悟を 思いの丈を
言葉にするも
上手く言葉を紡げずに
詰まらせてしまう
まだ 俺は……こんなにも
未熟だ……
あげはから この刀を受け取った時に
それを 覚悟して置きながらも
その覚悟が
幾度となく…揺れる
「……そうすべき、だとも」
流すことも
流そうとも
思ってもないのに
「だが……」
俺の感情が
自分の中から
次から 次にへ……と
自分の頬へと伝うのを感じていた
自分の意志に反している
流そうと思ってる訳でもないのに
止めることが…出来ない
「……この戦いが、終わったのなら……
その時は、透真さんっ。その時は……
俺から……、俺が、煉獄には話を…、
話を付けます。透真さん。
せめて、…せめてこの刀だけでも…、
貴方の代わりに…っ、
あげはの元へ戻したいと…。
あげはに持っていて貰いたいと。
少なくとも、
俺は、そう……思っていま…す。
そうだった……、はずだ。
貴方だって……そう
本当は、思ってる…、はずだ。
……っ、透真…さん、答えて……下さい」