第31章 その名を継ぎし者
そう 素朴な疑問が浮かんでは来たが
言われている事の意味が分からず
そのまま あげはは首を傾げた
でも 言えと言われて言っただけなのに…
何が悪かったんだろうか
しばらく うーんと唸りながら
考えてはみたが
明確な理由は わからなかった
中庭で素振りをしながら
あげはが戻って来るのを待っていた
炭治郎 善逸 伊之助の三人は
「にしても、あげるの奴、遅っせえな。
いつまで見送りしてんだ?」
「あ、いや、その、…お手洗いとか
かも知れないだろう?伊之助……
女性はお手洗いが長いだろう?」
イライラしている様子の伊之助に
匂いである程度の事を悟った
炭治郎がフォローする
ちょっと苦しい
言い逃れではあるけども
あまり深く考えない伊之助ならば
こんな理由でも
納得してくれるかも知れない
「あー、そんな感じな訳ね」
そう善逸が一人納得していて
「ん?どうかしたのか?善逸…」
「煉獄さんも煉獄さんだけどもさ、
あげはさんもあげはさんだって話だよ」
その善逸の言葉に
炭治郎と伊之助が首を傾げた
「要するにどっちもどっちって事、
なんだ、お似合いじゃん。あの二人」
善逸の言葉に
炭治郎が意味が分からないと
言いたげな表情を浮かべていて
「いーの、いーの。こっちの話だから」
そう言って善逸が
ひらひらと手を振って見せた
「何なんだ?変な善逸……だな」
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ただ その空間を支配しているのは
静寂…だった
一切の音がない
無音の空間…
水屋敷の道場の中央で
稽古着に身を包んだ義勇は
自分の視線の先に置いてある
道場の上座に鎮座した
日輪刀をただ静かに見つめていた
師範の 使っていた日輪刀…
これを……あげはから
受け取ったあの時
あげはから ある事を言われた