第31章 その名を継ぎし者
「さ、……さっきのやつ…が、その……」
「さっきの?何の話だ?」
「何でもありません。私は
3人を待たせておりますので。
杏寿郎もお約束があられるのなら、
早くお出になられたら、如何です?」
と今度はとげとげしい口調で
憎まれ口を叩かれてしまった
「出るのは、
約束もあるし……出るのだが。
教えてくれても……いいだろう?あげは。
それにそんなつれない
見送りをしてくれなくとも、
いいんじゃないのか?」
あげはの手を取って
彼は玄関の上り口より下に居るので
少しばかり上目に見つめられてしまって
自分の手に取った
あげはの手の甲に口付けを落とす
「それに、行ってらっしゃいの
口付けがまだだったろう?
その……、ダメだろうか?」
握っていた手を
指を絡めて繋がれてしまって
下から乞うような視線を向けられる
その手を引かれて
反対の手を腰に回されて
グイっと身体を引き寄せられる
「して、君の様子が…いつもと違う理由は?
話しては…、くれないのか?あげは」
「杏寿郎の…、その恰好の所為……です」
「恰好?隊服…がか?俺のいつもの姿だが……
俺の隊服姿に、見惚れていたのか?」
「もう!言えばいいんでしょ?言えばっ。
さっきのその……、羽織をバサッて
翻す、アレですよ!
……その、杏寿郎が……。
あまりにも格好良かったので…。
そうですよ!ご指摘の通りっ、
見惚れておりましたよ!
言いましたから。
これで、いいんですか?」
言えと促されて
自分が感じた事を
あげはが杏寿郎に伝えると
目の前の彼が
目を見開いていたかと思うと
その後に真顔に戻って
「その、先に…謝っておこう。すまない」
何に対する謝罪なのかと
あげはが思っている間もなく
彼に唇を塞がれる
その口付けが熱い熱がこもった物で
頭がクラクラとしてきて
「ん゛っ、……、
ふぅ、ん゛んっ、はぁ、…っ」
甘い声が重なる唇の間から漏れる