第31章 その名を継ぎし者
身の締まる……思い
はぁ ダメだ ダメダメ
邪念を払わないと……
精神を統一して
心を無に帰す……
すぅ はぁっと
深く短い呼吸を数回繰り返す
って普通に禊してる場合じゃなかった
身体……洗うんだった……
そうしてもう一杯水を汲むと
バシャとあげはが自分の身体に掛けた
白装束の間から石鹸を付けて
泡立てた手で
自分の乳房の辺りを洗う
これで… 大丈夫かな?
全身までは洗わなくても……いいかな?
ちょっと広めの範囲には
洗ったつもりだけど
石鹸 つけすぎると
すすぐの大変だし……
石鹸の成分を洗い流すと
バラの芳香に身が包まれる
この石鹸は前に蜜璃ちゃんと
町に買い物に行った時に
手作りの石鹸を専門に扱っているお店で
購入したものだ
購入したはいいが
お値段が張ったから
使い所が分からないで
しまい込んでいた物
「………ふぅー、これで良し…かな」
禊を終えて 濡れた白装束を脱ぎ捨てると
用意していた 稽古着に着替えて
あげはは髪をポニーテールにして
キュっと硬く結い上げる
中庭に向かうと
すでに中庭で
素振りをしている炭治郎達と合流する
それから
いつもの素振りや走り込み等の
基礎練習をして
小休止を取っていた善逸に声を掛ける
「ねぇ、善逸君…お願いがあるんだけど…」
「あ。もしかして……今日も六連する?」
あげはのお願いに対して
善逸がそう返して来て
にこっとあげはが微笑むと
首を横に振った
「ううん。今日は……八連……を
善逸君にはして欲しくて…」
「オイ。権八郎!」
「ああ。伊之助。分かってる」
その二人のやり取りを見ていた
伊之助が炭治郎に声を掛けて来て
昨日善逸が言っていた
あげはさんの呼吸の事……
呼吸の事に意識を集中すれば……
コツとかが分かるかも知れない
「でも、いい訳?俺が、八連しちゃっても」
「いいの、いいの。
ある事ができるのかの確認…
みたいなものだから……。
脳内では可能なんだけど……、
本当に可能なのか知りたくてね」