第5章 無限列車にて 前編
見ていて 気持ちのいい食べっぷりだ
美味しそうに食べる人だなぁ この人は…
おそらく 食べているのに集中してる間は
私に変なことも言っては来ないだろうし?
汽車が発車してからと思っていたが
私も早めの夕食にする事にした
それからしばらくして
私は夕食を済ませたが
彼はまだお弁当を食べている最中だった
空になったお弁当箱が積み上げられて行く
蜜璃ちゃんもそうだけども…
一体その体のどこに
それだけの物が入るんだろう?
ヒソヒソと声を顰めて話す声が
どこからともなく 聞こえて来る
『あの人が、炎柱…?』『うん』
炎柱だと 知っていると言うことは
鬼殺隊士?
「うまい!」
自分の事を噂されているにも関わらず
当の本人は気にする様子もなく
黙々と弁当を食べ続けていた
『ただの食いしん坊じゃなくって?』『うん』
ただの 食いしん坊な炎柱なのだ
間違ってはいない
「うまいっ!うまい!」
杏寿郎の声が大きいので聞き取りにくいが
聞き覚えのある汚い高音…の
無駄に通りのいい声
『ーーってか、女連れで任務とか、
信じられないんですけどぉー?
柱ってやつはいいご身分で、
結構な事じゃない?』
この特徴のある
喋り出したら止まらない言い回し
我妻善逸のものだ
『落ち着け、善逸!あの人はあげはさんだ!
善逸なら音で判るだろう?』
炭治郎が善逸を諭すように言った
炭治郎たちがここに居ると言う事は
全集中常中を体得出来たのだろう…
汽車の音がうるさいが
集中して3人の呼吸を探ると
確かに 常中になってる様だった…
3人がすぐ近くまで近づいて来て
善逸が私の方を見て ハッとする
叫び出しそうになるその口を
炭治郎が先に塞いだ
「すいませんっ!煉獄さん!
…今、よろしいですか?」
そのまま先に煉獄への挨拶を済ませ
それから私の方へ善逸の口を
押さえたままの格好で向き直ると
「あげはさん、今日は私服なんですね。
…とても良くお似合いで、素敵です…それに」
炭治郎が心なしか頬を染めながら
言葉の続きを言おうとした時
炭治郎に口を塞がれていた手を
善逸が除けると
「はぁー?お前、何言ってんの?
俺の方が、先に思ってたしね?あげはさん!
その服装も、髪型もすっごく
お似合いですぅ〜!可愛らしさの中にも
美しさもあってー、もう〜最高!」