第30章 蝶の入れ知恵とほどほどの戯れ ※R-15
俺の堪えが無さすぎるとでも
言いたいのだろうか?彼女は
そう頬を染めながら
伏し目がちに言われてしまえば
確かに普段の俺であれば
堪えが無くなってしまって
そのまま なし崩し的に
…なりかねないのだが
自分が愛おしいと思って
感じて止まない相手が
自分に対してそんな感情を抱いていると
そう俺が知れば…
「それは俺が…、君を求めすぎて
しまうからなのか?君が今も
あまりにもいじらしい事を
言ってくるから…。堪えてる…のだが?
それに、今はそう出来ないが…
覚悟は出来ている上での行動なのか?」
目の前の恋人にそう言えば
きょとんとした顔をしていたので
あげはは あまりそこまで考えて
そう言ってるんじゃないのは
何となくだが俺にも分かったが
「こうして、
俺を煽った分のつけ払いが…
一度に来ることになるが
…と言う意味だが?」
「え?でもあの時、
いつでも嗅いでくれていいって
杏寿郎言っておられませんでしたか?」
俺の言う事がおかしいとでも
言いたげに あげはが俺に
そう返して来て
杏寿郎があのサーカスでの
やり取りを思い返すと
あの時の彼女からする甘い香りが
気になってしまって…
その後ふらついた彼女を支えた時に
つい自分の鼻を寄せて嗅いでしまったが
その時に自分が言った事を思い出して
「そうしたいと思ったら、
いつでも言えと言ったのは
俺だったな。なら、好きなだけ
嗅いでくれて構わないが…?
ほら、いいぞ?」
自分の両手を広げて
どんと来いとでも言いたげに
笑みを浮かべながら杏寿郎が言って来て
彼の方に身体ごと向き直ると
おずおずとその腕の間に収まる
彼の胸板に顔をひっつけて
スゥーっと鼻から息を吸い込んでみる
先ほどつけすぎた香油の香りと
今は彼も お風呂上りだから
あまり匂いの強くない石鹸の香りと
その奥からしてくる杏寿郎自身の
匂いがしてきて
身体に回された腕でキュッと
抱きしめられると自分の胸の辺りが
ぽかぽかと温かくなってくる
こうして貰ってると…
心地いい…なぁ
温かくて 凄く 落ち着く
その心地良さに
あげはが目を細めて
そのまま瞼を閉じた