第29章 蝶々達の戯れと入知恵
「…で、こっちとか…、あ、でも
もうちょっと大きいのがいいかな?
しのぶちゃん…?」
「え、ええ。それがいいかなと
私も、見てたんです」
ぼんやりとしていて
口では同意しながら心が
ここにない事を気付かれてしまって
「しのぶちゃん?大丈夫…、
ぼんやりしてたみたいだけど」
「でも、良かったんです?
結構値の張るものですし…。
共同購入を申し出て頂いたのは
ありがたい話ではあったのですが…」
「うん。だって、あっちでは
そんなに出番もないだろうからね。
こっちでいいやつ使って貰いたいもん」
ね?と言って
目の前にいるあげはが笑った
その笑顔にカナエ姉さんの姿が重なって
そして 気が付いた
あげはさんがカナエ姉さんに見えて
しまって仕方ない理由が
「あ、その…髪型…以前、
いつもされていた髪型。
気が付きませんでした、
…違和感がなさすぎて」
「こうして欲しいって、
カナエちゃんに言われたからね。
この髪飾りを貰った時に。
でも、しんどくなっちゃって
しなくなったけど…」
ああ そうか
そうだったんですね
あげはさんは あの時
あまり多くを語らなかった
カナエ姉さんが 亡くなった後
何も言わなかったけど
何も感じなかった訳じゃない…
あえて 言わなかった…だけなのだと
受け入れられた…と言う事
なのでしょうか?
「でも、今日は…
カナエちゃんに話したい事
沢山あったから…さ。
お土産も渡したかったし」
そう言って笑った
あげはさんの笑顔は
カナエ姉さんと同じ顔なのに
違って見える
やっぱり 姉さんは姉さん……ですね
「あげは姉さん」
「ん?何?しのぶ」
「私は、姉さんが私達の姉さんで
良かったって、そう思ってた所です」
「ええ?何それ…」
「ああ。そうだ…ビードロのお礼と
言うほどでもないのですが…。
これ、私から。差し上げます」
そう言って 小さめ水薬の入った
薬瓶を しのぶから手渡される