第29章 蝶々達の戯れと入知恵
それに気が付いてたから
カナエちゃんは わざと…言わなかった?
自分だけが 悪者になってれば
それでいいの…って事?
ずっと 親友なんてしてたのだ
この親友が 考えそうなことなんて
私には 分かっていて
それは 全て
カナエちゃんが遺してくれた物
その 全てが…
私が 自分を責めたりしない様にって
そう 言っていて
悪いのは 全部 私なんだからと
そう言われている様な…気すらして来て
「…ーーーくない」
ギュッとあげはが自分の手を握って
コツンと自分の額を
カナエの墓石に押し当てて
そのまま 瞼を閉じる
「カナエちゃんは、悪くない、
何も、悪くなんか…ないから…」
そっと あげはの頬に
温かい何かが触れたような
そんな気がして
涙でぼやけた視界に
あの 蝶の柄の羽織が滲んで見える
そんな 幻を…見ている気がしていた
『だから、嫌だったの。
あげはちゃんに言うの。
だから、言いたくなかったの。
だって、あげはちゃんは
私の事、許しちゃうもの。
みーんな、お見通しよ?知ってたもの』
『だって、私はあげはちゃん…
貴方の親友でしょ?
貴方の考えそうな事なんて
みんな分かっちゃう…もの』
ここから 彼女の顔は見えないが
きっと今 困ったような
そんな笑顔なのだろうか…?
きっとこれは 幻覚で
私が都合のいい 幻を
会いたいと 謝りたいと思ってる
その人の 幻を 都合良く
作り上げているのだろう…か
でも 今は
幻でもいい…
「カナエちゃん、私…」
そのカナエの幻に向かって
謝罪の言葉を述べようとしたのを
カナエの声に遮られる
『ダァーメ。謝らないの。
だって、あげはちゃんは、
何も悪くないもの。
だから、謝らないで?ね?』
「だったら…っ、もう、
…謝らないっ、、からっ
ー…も、カナエちゃんも、謝らないで…っ。
……謝ら…ないで、カナエちゃんは……」
カナエちゃんが……っ
悪い……訳でも ないのにっ…
「悪く、ないからっ、
……カナエちゃんのせいじゃ…ない」
そのまま あげはが
その場にズルズルとへたり込む
その場にうずくまったままで
嗚咽しながら泣き崩れる
後悔ばかりが 後から後から湧いて来て
止まらない……