第28章 巡る流れと蝶と蝶
「俺でいいのか?
それ、話すの俺でいいのかつってんだァ」
「勿論よ。不死川君に話したい話だから。
だって。あげはちゃんの事だから…」
「あげはの?アイツは
もうすぐ此処、出て行くんだろ?
透真サンと近ぇ内に
結婚するってぇ話だろ、聞いてんぞ?」
スッとカナエの顔から笑顔が消えて
その瞳が鋭くなったのを感じた
「それは…、
私がさせない。させちゃいけないの…」
一瞬 コイツが
言ってる意味が分からなった
「あぁ?お前…一体何言って…」
つい先日だってその話を当の本人と
笑いながらしてたじゃねぇかよって
確かにそれを俺は見たのに…だ
それも些か穏便ではない話だ
2人を結婚させてはいけない
それも させないとまで
言うなんて…コイツが
どんな 理由が あるってんだよ?
「不死川君…、聞いて」
冗談じゃねぇ…ってのは
目の前のカナエの顔を見ていると
それは真剣で
本気なのだと分かった…が
「そらァ。随分と、
穏便じゃねェ話じゃねぇかよ?」
「不死川君、
お願いがあるの。もし私が…ーーーー」
そのお願いを聞き終えて
ふぅーっと不死川が深いため息をついた
「ごめんなさいね?不死川君、
不死川君にこんなお願いをしてしまって…」
「そら、別に構いやしねェ、なんて事ねぇよ。
けど…、お前はそれでいいのかァ?」
目の前のカナエは
その表情を曇らせて
目を伏せると
俯いたままで
「でも…いいの。決めた事だから……全部」
そう言うと
今度は意を決した様にして
顔を上げて 真っすぐに俺を見つめて来て
「だから、自分で出来なかった時に…。
それをお願いしたいの…。出来るなら、
自分でそうしたいけど、出来なかった時に。
もし、…そうなった時はお願いね?」
じっとカナエが俺の顔を見ていて
俺からの返事を静かに待っていた