第28章 巡る流れと蝶と蝶
杏寿郎の言葉にあげはがキョトンと
目を丸くさせて
「それに…、ゆっくりと話したい
話でもあるんじゃないのか?
君の事だからな…」
そう言って杏寿郎が笑顔を浮かべた
「杏寿郎…。
はい!ありがとうございます。
杏寿郎…、私は幸せ者です。
杏寿郎のお心使い感謝します。
では、お言葉に遠慮なく
甘えさせて頂きますね」
「ああ、あげは…。気をつけてな」
「もう、出かけるだけですよ。
大丈夫ですから。行ってきます。
なるべく早く、戻りますので」
そう言ってニコニコと
あげはが満面の笑みを浮かべて
頭をこちらへ下げると
そのまま下がって行った
「珍しい…ですね」
炭治郎がぽそっと漏らすように言って
「あん?珍しい?」
隣に居た伊之助がそう返してき来る
「いや、あげはさんは
感情表現しない訳じゃないけど…。
あんなに全面に、
喜びの感情が出てるのを
俺、見たの初めてかも知れません」
「だが、ああして喜んでくれる時が、
偶にあるがな。あげはがああなるのは、
俺が、彼女の大事にしている物を
同じように尊重した時だ…と、
俺は理解してるのだが」
それは合っているのかと
杏寿郎が炭治郎の方へ視線を向けた
「後、煉獄さんの呼吸の事で、
褒めてた時あったじゃん。
昨日のお昼ご飯の前の時にさ。
あの時の音に、今の音は似てたけど?」
あの場に我妻少年は…居なかったような?
いや 彼には聞こえてたのか
そうか…彼は耳がいいからか
善逸が杏寿郎の方を見て
口元を押さえながらニヤニヤと
厭らしい含みのある笑みを浮かべる
そうして居たと思ったら
ふっと気の抜けた笑顔になって
「でも、ま、…心底嬉しいって
感じてる音…が、あげはさんから、
聞こえるのは俺も、嬉しいけどもね」
「我妻少年…、やはり君は優しいのだな」