第28章 巡る流れと蝶と蝶
一人になって
しのぶが漏らすようにして
「でも、不死川さんは
お気付きだったのでしょうか?
どっちの姉さんも…、
多からず少なからずにしろ
不死川さんに
思いを寄せていた節が…あったのに。
まぁ、それを…
どうこうなされない所が
不死川さんの
良い所なのかも知れませんけど…?」
カタン しのぶが立ち上がると
窓際へ移動する
窓の外には通りを歩く
不死川の後ろ姿があって
「でも、貴方が、そんなんだから…
逃げちゃうんですよ?蝶々」
その小さくなっていく
不死川の後ろ姿を
しのぶが 自分の手を
ガラス窓に押し付けて 隠すと
「臆病者…。そうしないのなら…
もう、見てみないフリをして
放っておいたら良いのに…。
何が…、貴方をそう縛り付けるのか…」
きっとあるのだ
彼には彼の 理由が…
言葉としては語らなかったが
不死川さんにしかわからない
理由があると言う事…なのでしょうし?
「ああ、見えて。お人好し…と言う事、
なんでしょうか?不死川さんも。
どちらにしろ、私には関係のない話です」
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朝の稽古の休憩時間に
木陰で善逸が座り込んで休んでいると
善逸の前にあげはが来て
腰を屈めて
善逸の顔を覗き込んでくる
「ねぇ、善逸君に
お願いがあるんだけど…」
「ええぇっ?お願い?あげはさんが俺に?
お願いしたい事があるって事?
何、何なの?別に、いいけど。」
「善逸君の使う、霹靂一閃…の。
あの、普通のやつじゃない方の、
そっちの方の、霹靂一閃を
見せてくれないかなー…って思って」
「それって、
六連?八連?…って事、
本当はもうひとつ…
あるんだけどあれは…。
多分、あげはさんには
使えないんじゃないかって…」
「ああ、それはいいよ。
私には多分六連も使えないと思うから」
スッと善逸が立ち上がって
「だったら、六連したら
いいって事?それでいいの?
それぐらいだったら、
お安いご用だけど…」