第28章 巡る流れと蝶と蝶
「あげは…。もう少しばかり
…欲張っても、いいだろうか?」
そう言われてしまって
いいですよと答えると
あげはは瞼を閉じた
そのまま 彼に口付けを
あちこちにされてしまって
とは言っても 寝巻は乱さないで
出来る場所に限ってだったのだけども
その後 抱きしめられてしまって
そのまま布団の上に倒れ込む
よしよしと彼の背中を
自分の手で擦ってやる
首筋に彼の髪が掛かって
少しばかりくすぐったくもありつつ
背中を撫でて居た手を上げて
彼の頭をそっと撫でていると
急に重みが増したのを感じて
あれ?…もしかして
耳に入って来る彼の呼吸が
規則正しい寝息に変わったので
どうやら…彼は
私を抱きしめたままで
眠ってしまったようで
私の胸の辺りに顔を埋めて
穏やかな表情をして寝息を立てている
その寝顔を見ていると
彼がまだ
幼い子供の様に見えて来てしまって
可愛い…と思ってしまう
よしよしとその頭を撫でると
その額にそっと口付けを落として
「そう言えば…、
挨拶をしておりませんでしたね。
杏寿郎…おやすみなさい」
体重を預けられているので
少々苦しくもあるが
…耐えれないほどでもないので
その体温と重さを感じながら
あげはは瞼を閉じて眠る事にした
しばらくして 杏寿郎が
体勢を整えたくなって目を開くと
俺の身体は しっかりと
あげはの腕に抱きしめられていて
これは 普通は逆なのではないか?と
些か 今の この状況は
男としてどうなのだろうかと
思わないこともないのだが…
寝息を立てて眠っているあげはを
起こさないように気を遣いつつ
自重があげはの身体に掛からない様に
少しばかり身体の位置を調整すると
自分の身体を包んでいた彼女の腕の上から
自分の腕で包み返して抱きしめると
「おやすみ。俺の愛しいあげは…」
そのまま再び心地良い眠りに就いた