第28章 巡る流れと蝶と蝶
「だが、その…俺がそればかり…だな。
いつもいつも求めてしまって居るから、
君に勘違いをされているのではないかと…」
「でも、いつもそうしてたら…
そうしてないと、落ち着かないとか?
そんな事でないのでしたら…、
私としては、いいのですが…ね」
そう嫌味を若干込めて言うと
ふふふとあげはが笑った
その含みを持たせた言い回しも
声色もやはり色香を感じてしまって
良く知った相手だと言うのに
変に意識をしてしまって仕方ない
「俺が言いたいのはその、
…そうではなくて。
そこまでの事をしたいとは言わないし、
言うつもりもないのだが。
全くその…一切、
…触れられるのは君は嫌なのかと…。
いや、その、君が、俺に言いたい事は
分かるんだ。俺がそうしたら、
そうしたくなるんじゃないかと
考えての事なのだろうが…」
杏寿郎らしくない
随分と歯切れの悪い 物言いだ
それだけ 私の体調に対して
彼が気を遣ってくれてるんだろうけど
「だが、その、…何もかもダメだと
言われてしまうのは、少しばかり淋しい…」
そう告げてくる 声に元気がなくて
少し所か とても淋しいと
そう彼が感じてるのだと
私に教えてくれていて
「あげは…」
私の名前を呼びながら
私の額に掛かる前髪を指先で除けると
自分の額を私の額をコツンと合わせて来て
そのままその瞳に見つめられる
そっとその彼の頬に
私は自分の手を添えて
「その今は…、そうするのには
お応えはできませんけど。だからと言って、
何もかもを禁止するつもりは
私にも…ありませんよ?杏寿郎」
「なら、君に口付けても…?」
「そうですね。
余り…熱がこもらない程度になら…」
私がそうしている様に
彼も私の頬に手を添えて来て
頬に手を添えられて撫でられると
彼の顔が近づいて来て
口付けられる予感に
瞼を閉じた
そっと 触れるだけの
口付けを何度か繰り返すと
唇を一旦離して