第28章 巡る流れと蝶と蝶
布団を引っ付けてみたり
少し離してみたりをしている内に
それなりの時間が経過していた様で
ガラッと部屋の襖が開いて
「お風呂、ありがとうございました。
あの、杏寿郎…、
何をなさっておいでです?」
「ああ。あげは!戻ったのか。
いや、君が戻る前に
…君の分も布団を敷いておこうかと
思ったんだが…その」
不思議そうな顔をしながら
あげはが杏寿郎に視線を向けて
「でも、敷いた布団、付けたり離したり
してませんでした?気のせいですか?」
「なっ、み、見ていたのか?」
「いや、その…、色々と、
あぐねいておられた様でしたので。
私の方も、お声をおかけするか
悩みまして…一度襖を閉めて、
音を立てて開いたのですが」
そう言いながら
あげはがこちらへと近づいて来て
が杏寿郎の向いに腰を降ろした
そっと杏寿郎の太ももの辺りに
手を添えて来たので
彼女らしからぬ 大胆な行動に
少しばかり俺も驚いてしまいつつ
妙に身構えてしまった
「あ、あげは?…その、俺は…」
「私がそう言った時期なので、
お布団をどうしたらいいのか、
お悩みだったのでしょう?杏寿郎は」
あげはに俺が考えていた事を
言い当てられてしまっているにも
関わらずに
俺の心はそれ所ではなくて…
彼女の…
あげはが置いている
手の位置が実に際どい…
もう少しばかり上だったら その…
ススッ…と あげはが
太ももの上に添えていた手を
少し滑らせて来て
更に際どい位置になってしまう
部屋の中が薄明りだからなのか
その 彼女の行動の所為なのか
今の彼女を
そう言った方向へ意識しては
いけないと思いつつも
その濡れた髪が 頬に張り付いて
少しばかり唇に掛かるのも
ほんのりと紅潮した頬も
なんとも艶めかしくて
いつもの 普段よりも
何倍にも 色香を…
放っている様に感じるのは
気のせいなのだろうか?