第28章 巡る流れと蝶と蝶
あげはが竈門妹と
仲睦まじくしている様子を見ていると
何かの時に聞いた話を思い出した
その女性がどんな人なのか
それを知るには
赤子を抱かせるといいとか言う話を
どこぞかで聞いた事があるが…
この様な 穏やかな顔を
してる姿が見られるとはな
ついて来て良かった…な
とも思うが
早く彼女に あげはに
自分と彼女との間に出来た
子を抱かせてやりたくも
なってしまいそうでもある
「良妻賢母…とは、良く言ったものだな」
小さい声で言った
本人からすれば
それは 只の
独り言だったんだろうけど
俺にはバッチリ
聞こえちゃってるんだけどもなぁ
煉獄さんの惚気…と
善逸が考えていると
あげはには内緒で頼むぞ?我妻少年
と先程より より小さな声で
善逸の耳に 聞こえて来て
慌てて視線を煉獄さんの方へ向けると
こちらへ向かってしぃーっと
内緒と言いたげに人差し指を立てて
口元に当てる 杏寿郎の姿があって
やっぱり 音大きいけど
この人からする音は
案外嫌いじゃないなと
善逸は考えていた
「あ。そうそう、私ね、
禰豆子ちゃんに渡したい物があってね?
これなんだけど…」
身体を起こして
禰豆子を自分の膝の上に乗せると
持っていた箱を禰豆子の方へ
差し出した
杏寿郎はその箱に見覚えがあったので
その箱の中身が何なのかは
すぐに察しがついたのだが
「……むぅ?」
小首を傾げている禰豆子の前で
あげはがその箱を開くと
中には金魚の絵柄の描かれた
ビードロが入っていて
「禰豆子ちゃんには、金魚の柄ね。
ビードロは知ってる?」
「あ、金魚って、
蝶屋敷でしのぶさんの
金魚の事、禰豆子ちゃんが
嬉しそうに見てたからとか?」
善逸が蝶屋敷でしのぶの金魚を
禰豆子と見た時の事を思い出して
そう あげはに声を掛けて来る
「そうそう。フグの事でしょ?
禰豆子ちゃん、フグ好きだったから」