第28章 巡る流れと蝶と蝶
「って、なんかちょっといい感じに
纏まってて、いい話みたいに
してるけどさ。それって、杏寿郎さんが
我慢出来ないのは仕方がないって
話になってない?」
「でも、実際そうなんでしょ?
いいじゃん。
だって、幸せな事じゃないの?
自分が好きだって思ってる相手に、
好きだって思われてるんだもん、
それ以上の事なんてないよ。
そうでしょ?」
「紋逸、お前、ホントに紋逸か?
らしくねぇ事、言って
気持ち悪ぃやつだな」
その伊之助の言葉を聞いて
善逸がはぁーっとため息をついた
「だって俺、初めてあげはさんと
会った時の、あげはさんの音より、
今のあげはさんの音の方が
好きだもん。」
「善、逸…君、
…もう、また、そんな事言って」
「お前っ、なんであげる泣いてんだよ?
お前が変な事言うからだろーがよ!
謝れ!紋逸!」
そう言って伊之助が
どうしたらいいのか分からないが
炭治郎が泣いてる
禰豆子の頭を撫でていたのを
思い出して
あげはの頭を撫でた
伊之助の力加減なので
がしがしと犬でも
撫でている様な感じだったが
「ありがとう、伊之助。
これは違うの…。嬉しい…とか、
そう言う意味の涙だから…。
ありがとうね、善逸君。
確かに君の言う通りかも。
彼が、杏寿郎さんが居なかったら…。
きっと私は、
あの時のままだっただろうから…」
前に進めないで
しゃがみこんだまま
ずっと そうしてたように
逃げて 逃げて
現実から顔を背けていただけだったから
その後 戻って来た
2人が場所の空気が変だったのを
感じ取ったのか
不思議そうな顔をしていたが
稽古をまた再開した
午後の稽古も夕方を過ぎて
暗くなるまで続いて
その後もあの稽古を続けたんだけども
あげはさんに言われた事を
稽古中に実戦していたら
それを 何度も繰り返している内に
頭が痛くなったり 手が震えたり
とかしなくなって
しなくなっただけでなくて
状況の判断も
スムーズに出来る様になって
混乱しにくくなっていた
「よし!いい感じに仕上がって来てるな。
今日の稽古はこれで終いだ」