第27章 あの人の声と音の波に重ねる呼吸を
「まぁ、今は呼吸禁止ですから、
純粋な剣の攻撃だけですけど。
純粋な、剣の攻撃だけ…ねぇ」
「そのルールなら、
俺のが各段に有利になるが。
試してみたいのであれば、付き合うが?」
そう言って杏寿郎が
あげはに木刀を差し出して来たので
あげはがそれを受け取った
俺は さっき
あげはさんに言われた事と
同じ事を 善逸にもしようとしたが
伊之助よりも格段にスピードのある
善逸の一撃を捌ききれなかった
そして それが敗因となった訳だが
自分達の手合わせが終わって
現実に引き戻されたのだが
目の前で 何が起こってるのか…
一瞬理解するのに時間が掛かって
2人の動きを見ていて
煉獄さんとあげはさんが
俺達と同じルールで
手合わせをしているのだと気付いた
伊之助がそれを
目を輝かせながら見ていて
「オイっ!見てみろよ!
すっげぇぜ、すっげえな!見えるか?
あげるが、ギョロギョロ目ん玉の攻撃…
全部、流してんだぜ。すっげぇな、アイツ」
伊之助は あの速さが見えてるのか?
いや 俺にも見えてる
見える 見えてる 動きが目で…追える
煉獄さんとの稽古の…成果か
煉獄さんの剣撃の速さを
ずっと直で見たから
あの速さが見えるのか…
あげはと木刀を打ち合いながら
杏寿郎は考えていた
不思議な…気分だ
あげはの動きを見ていると
まるでここが
水の中か何かなのかと
そんな勘違いをしてしまいそうだ
速さに緩急があるからか?
素早い動きと ゆったりとした動きを
織り交ぜているんだな
その辺りは 時任少年の使う
霞の呼吸にも…近いが
だが… 彼女には
胡蝶が得意とする様な
上空から来る攻撃がある
それも 一瞬であの高さに到達する速度
「あん?あげる
いねぇし、何処行った?」
伊之助があげはの姿を見失って
そう声を上げた
「伊之助、上だ」
炭治郎がそう言って
3人で上を見上げる