第27章 あの人の声と音の波に重ねる呼吸を
嫌な 予感がしながらも
炭治郎から受け取った
その風呂敷を解くと
中に入っていたのは
酒の入った瓶で
その瓶の中を満たしている
少しばかり 黄色味を帯びた液体に
あげはは見覚えがあって
炭治郎君が言っていた言葉が
どうにも引っかかる
スルスルとその風呂敷を降ろして
瓶が全て 見える頃には
瓶の底に泳ぐ様に揺れる
アレ…が見えて
後ろからそれを
興味あり気に見ていた杏寿郎が
ほぅと声を漏らすと
「竈門少年。君はさっき、これは
胡蝶の調合した物だと言ったな?」
「え、ええ。
しのぶさんがそう仰ってましたけど」
「そうか。これは、この間の。
…あれよりも、強力なのだな?
それは、楽しみだ。なぁ、あげは」
「ええっ?いやっ、その、これは、
しばらくは…禁止です。どの道、
飲める様になるのはまだ先ですから。
お酒と中の薬効が熟成されるまでは、
お飲みにはなれませんよ?杏寿郎」
炭治郎はそれが何なのか
聞きたいと思う気持ちもあるが
同時に聞くのが恐ろしくなってしまった
どうにも 二人からする匂いが
厭らしさを含んだ艶のある
大人の匂いだからだ
多分それは
善逸も耳から感じ取っている様で
何もわからない伊之助を除いては
どうにも気まずい空気だったんだが
兎に角…
その後の午後からの稽古中の
煉獄さんの機嫌が滅茶苦茶良くて
あれはしのぶさんから
あげはさんにと贈られた物なのに
当のあげはさん本人よりも
煉獄さんの方が
数倍にも喜んでるようにあるし
贈られた方のはずの
あげはさんは
どうにも
ため息をついている事が多く
どちらかと言うと上の空で
気がかりがある様に見えて
「よし、だったら。
そろそろ、手合わせでもして貰うか…」
突然に何か思い立ったのか
杏寿郎がそう言った
「え?手合わせって、でも、
俺達…3人なんですけど?」
煉獄さんが俺達同士で
手合わせをと言ったのに対して
善逸が難色を示した
手合わせをすると
どうしても一人残ってしまうからだ