第27章 あの人の声と音の波に重ねる呼吸を
「あげは…、いいか?」
「あ…、っ、杏寿郎…?」
名前を熱のこもった声で呼ばれて
顔を近付けられて
そのまま 瞼を閉じると
唇が重なる
ガタガタンッ…と
母屋の方から大きな音がして
慌てて振り返ると
そこには
派手に転んだ炭治郎がいて
「すっ、すいませんっ!
俺っ、厠に行こうとしてっ、
その決して覗こうとか
そんなつもりがあった訳じゃなくて…。
すいませんでしたぁああーーーーっ!!」
と大きな声で叫んで
そのまま炭治郎はその場から
勢いよく走って行った
けど…
そっちは厠とは反対方向なんだけどな
そっちから厠へ行こうと思ったら
またここを通る事になるのに
ふぅっとあげはがため息を漏らすと
じっと睨むようにして杏寿郎を見る
「杏寿郎?場所……を、
考えた方がいいのではないでしょうか?」
「だが、君も合意したんじゃないのか?
俺だけの所為なのか?」
「私はっ、先に行かせたから、
大丈夫かと思ったんですってば」
口付けを交わしてる所を
見られてしまったと思うと
恥ずかしくもなる
じっとこっちを見ている
杏寿郎と目が合って
「だが、俺は…そんな風に
口付けを交わしている所を見られて
恥ずかしがっている君を見ていると……」
スッと耳元に唇を寄せられてしまって
彼の吐息が 左の耳に掛かる
手を手繰り寄せる様に
探り当てられてしまって
手の平を指先でなぞると
指を絡めて繋がれてしまう
「俺はもっと、
欲張りたくなってしまうがな?」
「いや、
その…今は欲張ったりは…無理じゃ」
「そうですよ、炎柱様?欲張らるのは、
鏡柱様のお身体の調子が整われてからの
方がいいのでは、ないでしょうか?
お二人とも、
お食事の準備が整っておりますよ?」
とニコニコと笑顔を浮かべた
春日がそこには立っていて
その笑顔の裏が怖いとも
杏寿郎が感じたが
「お二人がなかなか来られないので、
継子の方々がお腹を空かせて、
待ちくたびれられておられますよ?」