第27章 あの人の声と音の波に重ねる呼吸を
2人だけになっても
あげはは話を始める訳でもなく
沈黙が続いていた
「お代わり、…淹れようか?」
俺が持っていたコップが
空だったからなのか
そうあげはが
善逸に声を掛けて来たので
お願いしますとコップを差し出した
冷えた麦茶が満たされた
コップが手元に戻って来て
「善逸君には、…聞こえてたんだよね?
私の、その右耳の声……が
聞こえてたから。私に、あんな風に
聞いてきた…んだよね?」
「ああ。話って、その事…?
それの事なんだけどもさ。
俺達、煉獄さんから、
少しだけ、聞いちゃってるんだけど?
あげはさんの、その昔の話をさ。」
私からの返事を待たずに
更に善逸が言葉を続ける
「あげはさんの右の耳から、
聞こえてたのはさ…音なんだよ。
声とは全く違うやつ……でさ。
震える振動みたいなのでさ、
音とか声って出来てるんだけども、
声が持つ振動とは、あげはさんの
右耳のやつって全然違ってたから」
「うん。私が…善逸君に聞きたいのは
それを防ぐ方法。その振動に
脳が左右されないで済む方法を、
君が知識として持っているかって事」
あげはの質問に
善逸は驚く様子はなくて
前に同じことを
誰かにでも聞かれたいた様でもあり
「あげはさんと同じ事、宇髄さんってあの、
音柱って人にも聞かれたんだけど?
同じ様なこと、煉獄さんにも言われたし」
そう言って善逸は
はぁーっと大きなため息をついた
「善逸君、宇髄さんと会った事あったんだ」
「まぁね?それはいいんだけどもさ。
まぁ、俺は、問題ないよ?俺はね。
俺は自分の耳を調整できるから、でも
そうじゃない人は大変だと思うけど。
俺、あの人に課題出されてるしさ?
やんないと俺、あの人に殺されちゃう訳っ、
酷いと思わない?」
「私としては、音波であるなら、
こっちからも
それを相殺する音波を出す事で
防げるのかなって思ってるんだけども?」