第26章 傷跡の理由の裏側
「あげは。鏡柱である君と…
俺は炎柱として、くつわを並べ鬼と戦いたい。
俺は今の君となら、打倒上弦も可能だと
それが出来ると確信しているし、
この俺の考えている事も、
また、俺の中の真実なんだ」
煉獄杏寿郎としての本心と
炎柱 煉獄杏寿郎としての本心
と本人は言っていたが
彼の語り口を見るに
どちらも本心である事は
本人も言う通り紛れもない事実なのだろう
そして 自分でも相反する
二つの願いに折り合いが付けられなくて
私にその判断を委ねようと
そう…思ったと言う訳か
よしよしとあげはが杏寿郎の頭を
優しく撫でるとにっこりと微笑んで
「で、ご自身でお決めになれないから
私に決めさせようと…、お考えに?」
呆れたとばかりに
あげはに言われてしまって
全くもって その通りなので
言い返す言葉もなく
黙り込んでしまっていると
ふふっとあげはが笑って
「だったら、それは……私にだって、
決められませんよ?杏寿郎。だって
それがどちらも貴方の望みなのなら、
私はそのどちらも
叶えてあげたくなりますもの」
あげはの手が
俺の両方の頬に添えられて
あげはの目が俺の顔を見つめていて
ああ 何て
彼女の目は優しくて
穏やかな瞳をしているのだろうと
そのまま腕を回されて
あげはの胸に顔を埋めるかのようにされて
抱きしめられてしまう
「だが、君はそうは言うが、俺の願いは、
どちらも同時に叶えられる様な
物ではないぞ?あげは」
妻として 私に共に在って欲しいと
同じ柱として 私に共に在って欲しいと
そして その
どちらの 私で在ったとしても
彼は愛してくれて
支えてくれて 守ってくれるのだと
そう言ってくれているのに……
「でもそのどちらかを取ったら、
どちらかの願いが…
叶わなくなってしまいますよ?杏寿郎」