第26章 傷跡の理由の裏側
「煉獄杏寿郎としての気持ちと、
炎柱煉獄杏寿郎としての…気持ちだとでも
言えば、納得ができそうか?」
そう言われてしまえば
彼にとってはそれが
紛れもない 偽りのない真実でいて
キッパリと言い切られては居るが
その彼の願いは 公私混同でいて
それでいて 正反対の希望を
現に私は突き付けられている訳で
「あげは」
名前を呼ばれて
その赤い瞳に見据えられてしまう
右の肩を掴まれて
反対の手で腰に手を回されて
彼の腕の中に閉じ込められてしまう
「杏寿郎っ、でも…それは、私には……」
彼は その判断を私に
させたいと言っているのだろうか?
「あげは。それは今、
君が選んで答える必要はないが?」
そう言われながら
顎をクイッと引かれて
自分の目の前に彼の顔がある
槇寿郎様と同じ… 目……
鼻先が掠めるほどに
唇が触れそうなほどに 近い距離で
杏寿郎の赤い目に 見つめられて
その視線に囚われてしまう
「例え君が、そのどちらを選んだとしても……、
俺が、君を支える事に、守り抜く事に
そして、……愛し抜く事に
何ら、変わりはないが?そうだろう?」
一瞬 彼の言葉に
胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じて
愛おしいと言う気持ちに
満たされて行く様な
そんな気持ちになったのだが
おかしいと言う 事に気が付いてしまった
「でも、鬼殺隊を…続けて。
私が、柱に戻るのを選んだとしたら…」
それは
その杏寿郎の言葉と合わないのでは?
「あげは。君は些か、俺の言葉を
勘違いしている様だが。
君が、鏡柱として鬼殺隊を続けたとしても、
君が俺付きである事には永年変わりはないし。
俺と同じ、苗字になる事も同じ事だが?」
え? だったら
私は 何を選ばされようとしてるの?
「え?だったら、
これは私は、何を尋ねられてるのですか?」
「子作りを
しばらく控えるかと言うだけの事だが?」