第26章 傷跡の理由の裏側
いつか この人と共に肩を並べて戦える
そんな そんな剣士に
私もなりたいって いつか……
憧れて…た 敬意の念を抱いていた
「それは、簡単な事だ。俺が君に対してずっと
抱いてきた感情が、正しくそれだからな。
そして、その強烈なまでの感情は、自分が
柱となりその相手と並ぶようになった後も、
心の中に強く刻まれたまま…、
変わる事は無かった。
あげは。俺はずっと…君を」
そっと自分の両手で
杏寿郎があげはの頬を包んで来て
じっとその視線に囚われてしまって
「自分の中に作り上げた君と言う幻影を
追いかけていた…、あげは。君の……、
幻を…、だ。ずっと、追い求めていた」
ギュッと強い力で
抱きしめられていて
身じろぐ事も許されていなくて
「でも、杏寿郎。私は…ここに居ますよ?
貴方の腕の中に、居るのに?」
更に力を込められてしまって
まるで私が 幻か何かの様に
消えてなくなる物なのかの如く
すがりつかれても居る様でもあって
「自分でも、バカバカしいと
そう思っているのに、それが消えない…。
君が、もうここに居るのに…だ」
杏寿郎の言葉を
あげはが頭の中で整理する
杏寿郎が言いたいのは
私が 槇寿郎様に抱いている気持ちと
杏寿郎が 私に抱いている気持ちが
同じだって言う事?
槇寿郎様が炎柱の名を捨てて
剣士すらも辞めてしまった後も
私の中にずっと在った
その気持ちが 変わることはなくて
私の中で 槇寿郎様のあの時の姿が
色褪せる事がないのは…… それで?
私が 私の中で
槇寿郎様の影を作り出していて
その影をずっと追い求めていたから?
私が何も返さないからなのか
杏寿郎が更に
「君も……そうじゃないのか?
今の君の実力は、父上よりも上だ。
それでも……、君の中のそれは
揺らいではいないだろう?それと同じ事」
杏寿郎の言葉にあげはがハッとする
正にその通りだったからだ