第26章 傷跡の理由の裏側
正直な所 聞きたくない真実だったな
聞いてしまった事を 後悔してしまいそう
「命を救われた恩を、一生を掛けて返したい
その気持ちがあったのも、真実ではあるが…
俺はあの時、蝶屋敷の中庭で飛び交う
蝶に囲まれている君を見て……」
「でも、もし仮にその時に
杏寿郎が、私に一目惚れしたとしてもですよ?
あの時は隣に、透真が居ましたし、
年齢的にも結婚が出来る年齢ではなかったのに」
杏寿郎の話を遮って
あげはが自分の思いを話始めた
あの時に感じていた
疑問を俺にぶつけたいのだろうが
「俺はまだ、話してる途中だったんだが?
俺が、あの時の君に求婚した理由が必要か?
あの時の俺が、5年前の俺が、あげは。
君に特別な物を感じたからだ」
特別な物…それは…… 一体
ふぅっと漏らすようにして
杏寿郎がため息をひとつ付くと
更に言葉を続けた
「君の中でも、それは同じじゃないのか?
君にとって、俺の父上は
大層、特別な存在な様にあるが?」
槇寿郎様が 私にとって
特別な 存在?
「違っ、確かに柱として槇寿郎様の事は、
心より尊敬はしておりますが。
そんなっ、違いますし、違いますからっ!
槇寿郎様の事は、その……
自分の父の様に慕ってはおりますが…」
そうは 否定してみたが
確かに 自分の中にある
槇寿郎様への敬意にも似た念は
ずっと 私の中に息づいていて
揺らぐ事も 失われることもない
憧れ…でしか なくて
それを指して 特別と言うのなら
やはり 特別と
言う事になるんじゃないかって
そう あげはが考えていると
「君には、父上が絶対的な圧倒的な
そんな存在に見えた…そうではないのか?」
「どうして…それを…」
あの日 あの時に
鬼を狩る 槇寿郎様を見て 私は
柱と言う 圧倒的な強さを持つ存在に
強く 胸を揺さぶられてしまって
その 炎に
鮮烈な赤に 知らず知らずの内に
魅了されてしまっていたんだ
炎柱 煉獄 槇寿郎と言う 存在に