第26章 傷跡の理由の裏側
俺はそれを その真実を
彼女に伝えるべきでないと
このまま 一生 嘘をつき通す
つもりではいるが
同時に 心苦しくもありつつ
だからと言って 真実を
告げた所で 彼女を苦しめるだけだと
そうも思って居て
どっちつかずのままでいるのが現状だ
「もし、……私が年頃を迎えても
誰も貰い手がなかったら、槇寿郎様が
家に来いと言って下さったんです」
そうあげはが言い終わるや否や
ガッと強い力で
両肩を杏寿郎に掴まれてしまって
「君だったのか?俺に婚約者がいると
父上が、漏らしていた相手は!
君だったと言う事か?」
そう凄まれながら言われてしまって
肩を掴んだままで揺すられてしまう
「あ、あの?杏寿郎、
ええ。それは、そうなのですが
……でも、そのお断りしたのですよ?
私は、傷物ですし…、その歳も3つも
上ですし…、名家のお嬢様でもないので。
あの、杏寿郎?どうかなさいましたか?」
「だったら、君がその話を、
受けてくれてさえいてくれれば。
俺の20の誕生日に、君と祝言を
挙げていた物を!今頃…俺と…君は」
「いや、だから、
ちょっと、落ち着いて下さいっ。杏寿郎。
私はそのお話はお断りしておりますし、
それに、私には…彼が居たのですよ?」
「すまない。俺とした事が取り乱してしまった。
だが、父上が見つけて来た婚約者が、
君だと知っていたのなら…何も…
こんな事には。俺が、君に出会った
5年前に……君に求婚したのも」
元を正していけば
俺は そうなる相手を
ただ与えられるのではなくて
自分が一生を添い遂げる相手を
自分の目で見つけて
探しだしたいと…
そう思っていたんだ
「もしかして、槇寿郎様が
取り付けて来た婚約を
体よくお断りする口実…だったとか?」
「それは誤解だ!確かに、そんな考えが
頭のどこかにあったのかも知れはしないが、
だが、そうじゃない!俺はあの夜に君に、
鏡柱である、貴方に命を救われたんだ!!」