第26章 傷跡の理由の裏側
俺が文をしたためていると
もうあげはは書き終わったのか
まだそんなに時間も経っていないのに
立ち上がって部屋を出て行った
しばらくすると 自分の腕に
あの環と言う 真っ白の鴉を乗せて
部屋に戻って来た
よしよしと その鴉の労を労って
身体を丹念に撫でていた
「環。しのぶちゃんに、お手紙…お願いね?」
その足に手紙を括り付けて
鴉が飛んでいくのを見送った
まだ 夕飯までは
しばらく時間があるが
「これから、君はどうするつもりだ?
俺は…、すまないが、
まだしばらく時間が掛かりそうでな…」
「でしたら、私は、もう少し今朝の
鏡の細分化の要領を得る方法がないかを
模索しておりますので。
杏寿郎は、お構いなく、続きをどうぞ?」
「そうか、分かった。すまないな」
あげはが ではと言って
杏寿郎に小さく頭を下げると
部屋の隅で稽古着に着替え
部屋を後にした
杏寿郎が文をしたため終えると
自分の鎹鴉である要に
実家への文を託して
そのまま広間へと向かった
広間の開け放たれた障子の間から
中庭が広がって見えており
その中庭の中央で瞑想をしている
あげはの姿を見つけて
彼女を注視してみると
その周囲を
数面の鏡が取り囲っている事に
気が付いた
8面 鏡…か
もうすでに 彼女には
見えてる…と言う事か
更に 効率のいい
鏡の細分化の方法が
「随分、鏡を増やす速度が
上がったんじゃないか?」
「ああ、杏寿郎。私、考えたのですよ。
トリカゴで数面の鏡を合わせて
一枚の鏡にするのなら、
その段階の状態を意図的に作れれば…。
予め複数枚の鏡の具現化は可能なのではと…」
「成程、鏡面からではなく、
鏡面迷宮から型を構成すると言う事か…?」
杏寿郎の言葉にあげはが
そうですと頷く
鏡面での鏡の複数枚所持では
私に対する負荷が掛かりすぎる
でも 伍の型の
鏡面迷宮 トリカゴ からならば
元から複数枚の鏡が具現化できる