第26章 傷跡の理由の裏側
「何だ?」
「ドレスに、108輪のバラが
入りきらないようでしたら…。赤いバラは、
髪飾りにさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「なら、108輪の中の
6輪で、お願いしたいのだが?」
杏寿郎の言葉にデザイナーの女性は
何の事やらと
面食らったような顔をしていて
あげはは口元を押さえて
笑い出してしまっていた
その2人を見ていると
特別な意味のある6輪だったのだと
理解する事が出来たので
そうさせて頂きますと
デザイナーの女性が返して来た
仕立て屋を後にして
「これから、どうする?
あげは、何か買いたいものでもあれば……」
「あ、でしたら。
丁度……、欲しい物があるのですが」
さっき仕立て屋で杏寿郎が
あの時の赤いバラの話をしたから
丁度 思い出した事があった
あげはが買いたい物があるからと
ある店に立ち寄った
ガラスのグラスやケースが沢山置かれている
ガラス細工やガラス製品の専門店の様だ
入り口には色々な色や模様の
ビー玉がばら売りされており
小さなガラスで出来た猫やかたつむり
カエル等も売られていた
ガラス製品を専門にしているだけあって
薩摩切子のグラスやビードロも壁際の棚で
店内のライトを受けて キラキラと輝いていた
杏寿郎の視線が
ビードロに向いていたのが分かったので
「杏寿郎も、興味あるんですか?ビードロ」
「俺は、子供ではないぞ?あげは」
「でも、それで遊ばないにしても。
飾っておくのもいいかもしれないですけど?
綺麗な色……してるし、それに……」
「それに?」
「杏寿郎が吹いたら、割れそうですしね」
そう言ってクスっと笑った
「俺にだって、力加減ぐらいはできるぞ?
して、買いたい物は、決まったのか?」
「ええ。そうですね……、
あ、でも買って帰ろうかな?ビードロ……。
でも…、すぐに渡せないか」
すぐに渡せないと言うあげはの言葉に
そのビードロは蝶屋敷への
土産にと考えていたのだと分かる