第4章 ちょっとだけ 分かったこと
さっき列車に乗る前も
ホームで彼女に声をかけたそうにしている
若い男の2人連れがいたが
俺が隣にいたので遠慮したようだった
彼女は見目がいい
いや胡蝶や甘露寺も見目通りはいいのだが
もし仮に 彼女の性格が
とてつもなく悪くとも
この見目の良さだけで
十分にいかなる欠点も補えそうな物だ
現に俺は彼女の内面的な部分も
気には入っているし
その優しさは 優しさがすぎるほどで
“毒”とも呼べよう
もしかしたら 宇髄や不死川以外にも
言い寄る男がいるのかもしれない
「私の婚約者が、死んだのは知ってるでしょ?」
「ああ、知っているが。それがどうした?」
「死んだのは、彼だけじゃないとしたら?」
「どう言う意味だ?」
あげはの言葉に杏寿郎が顔を顰めた
「私と、恋仲になって、深い間柄になった相手が
もれなく…、みんな死んでしまって…」
「冗談にしてはタチが悪いが、
本当にしては信じがたい」
そんなにも都合良く 偶然が重なるのか?
「ただ死んだんじゃなくって、…殺されてるの」
「偶然が単に重なった…だけだろう?」
俺が彼女に求婚したり
恋仲になりたいと言ったからなのか?
俺に対する当て付けのつもり…なのか?
しかし 彼女の表情を見るに
嘘を言っている様にも見えないが
「1人か、2人なら…私もね。そう思うよ?
考えすぎだって。実際そう思ってた訳だし?」
誰か適当な恋人を作らないのも
いやこの場合は作れないのも
ましてや 宇髄の嫁になる事も
不死川と恋仲になる事も
俺の求婚を受けることが出来ないのも?
全てこれが原因だと…言いたいのか?
突然そんな事を言われて
了承できる訳もなく
「まぁ、突然こんな話されても、
…困るよね?信じられない…よね?
私だって、そう思うもん。
逆の立場だったらさ」
と自嘲気味に笑って
冗談っぽくおどけて見せた
「俄には、信じがたい話ではあるが。
君がそこまで、確証もない話をするとも
…思いがたい」
「だったら…」
それが 冗談にしても本気にしても
彼女がどうしてほしいと思って
俺にこの話をしたのかは
安易に推測ができる
「だが、その話を聞いたらかと言って、
このまま引き下がるつもりはないぞ?」
「ーーっ!…人の話…聞いてた?」