第24章 町行かば ※R-15
「でしたら、杏寿郎さんが選んで
見立てて頂けませんでしょうか?
白無垢に関しては、私よりも杏寿郎さんの方が
熱い思い入れがおありのようでしたので……」
白無垢の柄にはそれぞれに意味があるし
複数の柄が組み合わさった物もある
「白無垢で好まれるのは、鶴、松竹梅、桜…」
店員が杏寿郎とあげはの前に
それぞれの柄の反物を広げて見せる
「奥様は、お美しくて
華やかであられますので、
桜や、牡丹、御所車もお似合いかと……」
「それは?鶴ではないな……何の鳥だ?」
広げている方の反物ではなくて
積まれている方の反物に
杏寿郎が興味を示して
「ああ、こちらですね…、
こちらは鳳凰にあります」
そう言いながら 店の主人が
鳳凰の柄の反物を二人の前に広げる
鳳凰の柄も確かに
白無垢には定番の柄ではあるが
杏寿郎の目に留まっただけあって
その反物の鳳凰はかなりの大柄で
異彩なまでの存在感のある物だった
あげはがちらっと
隣に居る彼の顔を見ると
その表情から
彼の中でもどうも
もうこれで決まったんだと悟ったので
「私は、杏寿郎さんに従いますので」
と小さく言った
「この柄には、どんな意味があるんだ?主人」
「鳳凰は、吉兆を表す鳥にあります。
不老不死と平和をもたらすと
古くより言い伝えのある、柄にあります」
「そうか。それは目出度い鳥なのだな」
「あの、当然なのですけども
……赤こぶき…ですよね?」
杏寿郎にお伺いを立てる様にして
あげはがそう声を掛けた
多分 私が想像するに
杏寿郎さんの性分から考えれば
赤こぶきにするだろうなぁと
「ああ、無論そのつもりだ、
赤ふきの紅裏で、綿帽子も
紅裏で頼みたいのだが……」
大柄の鳳凰に赤こぶきの紅裏?
ってなんて派手な白無垢なんだろう
仕立て上がりを想像しても
かなりのインパクトのある仕上がりだ
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用語解説
赤ふき(赤こぶき)
襟元・裾に赤のラインの入った白無垢
赤ふきの場合は裏地は白地を用いる
紅裏
裏地が赤い白無垢
この場合は 赤の色合いの
比率の多い白無垢と言う意味
ソースによると、両者が混同されている
場合もありますが、画像を見ると別物の
様にあったので、この形で使いました。